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それを、口にすれば
第13章 思いやるということ
パートで働いているウェイトレス宛てに、店に電話が入ることなどまず無い。
それなのに、日に何度も同じ男の声で優雨宛ての電話があることに、職場の同僚たちは皆様々な憶測をしている様だった。

電話だけならまだいい。
日によっては、店の外から強面の男たちが数人でじっと覗き込んだりするのだ。

初めは色恋沙汰を想像していた同僚たちも、今ではその男たちの本当の正体に気付いているのかもしれなかった。

(あんなに怖い人たちからお金を借りるなんて……)

取り立てと言っても、ドラマで見たことがあるように怒鳴り込んで来る訳ではない。
電話を何度も掛けて来たり、店の外で長時間じっと睨みつけていたり……もっと執拗で、陰険な方法だった。

解雇されて以来、職探しもせず家でゴロゴロしている良介だったが、周囲に取り立て屋が来るようになったものだから、居留守を使い更に家に閉じこもるようになってしまった。
理沙子とも会っている様子はない。

家と車のローンや借金の返済、取り立て屋の嫌がらせ……全てが自分にのしかかって来て、優雨は途方に暮れていた。

店長に頼んでほぼ休みなくパートに入れるようにしてもらったが、そんなことでは補いきれそうにないのは分かっていた。

(これからどうしたらいいのだろう……)

でも、今はまず電話に出ないといけない。
何を言われるのか分かり切ってはいるけれど……。
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