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それを、口にすれば
第13章 思いやるということ
店先の電話では無く、事務所の中で受話器を取ろうと小走りで事務所に入る。

と、その時……
厨房から駆け付けたのだろう。コック姿で後ろからドシンドシンと入って来た店長が、優雨を追い抜き、パッと受話器を取ってしまった。

「もしもし?」

「あっ……店長!?」

慌てる優雨を店長は空いた方の手で制す。
その顔はとても険しくて、いつもニコニコ笑っている熊さんのような店長とは別人に見えた。

「うちの従業員に何の用ですかね? ……店長です…………いや、それよりもあんた達のやり方にも問題あるんじゃないか? 変な連中に店の周りをうろつかれて迷惑しているんだ……」

(店の外の男たちのことも、店長、気付いていたんだ……)

こんなに迷惑を掛けて、どうお詫びしたらいいのだろう。
息をするのも辛いぐらいに胸が苦しい……

「あんた達にも理由はあるだろう。でも、職場になんか来なくても彼女は逃げたりしない……何なら、然るべきところに相談してもいいんだよ…………うん、はいはい、よろしく頼むよ」

ガチャン……と受話器を置くと、店長が優雨の頭をポンポンと叩く。

「もう店には来ないよ。電話も無い」

「え……?」

店長の顔を見上げると、いつもの優しい笑顔が浮かんでいる。
でもその姿はいつもよりも更にどっしりと頼りがいがあるように見えた。
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