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それを、口にすれば
第13章 思いやるということ
もちろん、優雨を大切に思う気持ちに変わりはない。
すぐにでも会いたいと思ってはいたが……。

大っぴらに会う理由が無い上に、優雨からも少し時間が欲しいと言われていた。パートの時間をかなり増やしているらしいのだ。

優雨の話では、警察から戻った良介は殆ど家にこもりっきりだという。理沙子とも会っていないようだ。
収入が途絶え生活が困窮する中、全てのことを優雨に押し付ける良介に、日頃は穏やかな結城も怒りを覚えずにはいられなかった。

そして、理沙子に対する疑惑……
なぜあんなことになったのかを、妻は全て知っているのではないか……?

「……その話は誰から聞いたんだ? 彼と……会っているのか」

もしかすると二人は会っているのかもしれない……そう思ったこともあったが、それを問い質すのは初めてだった。

もし会っているのなら、優雨一人が働いている状況なのになんとも思わないのだろうか……と改めて憤りを感じる。
優雨の方は、こんなことになったのは妻である自分の責任でもあるのだから……と自分を責めてさえいるのに。

そのせいで優雨は、マンションや車のローン……一人ではなんともならない筈なのに、結城が申し出た援助も頑なに拒んでいた。

妻として至らなかった自分、夫を甘やかして来た自分、他の男を愛し、夫が窮地に陥っている時にその腕の中で眠っていた自分……。

結城が何を言ってもその心は閉じられたままで、いくら愛していても自分は無力で、優雨は良介の妻なのだということを思い知らされた。

現に、上着の中のスマホは黙ったままで、ここ数日途絶えたままの優雨からのメールの返信が未だに無いことを告げていた。
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