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それを、口にすれば
第13章 思いやるということ
「いーえ、会ってないわ。怖い顔してどうしたの? ちょっとしたツテがあってね。耳にしただけよ」

「……」

良介と連絡を取って、仕事を紹介してやろうかとも思っていた。

あの男を紹介するということは、雇い主にリスクを負わせる可能性があることは重々分かっていたが、パートを増やし、休む間もなく働いている優雨を黙って見ていられなかった。

それに想像通りに理沙子が仕組んだことならば、夫である自分が責任を取って然るべきだとも思う。

しかし、理沙子はどうしてあんなことをしたのだろう?
今まではプレイの上でいくら酷いことをしたとしても、それを実生活にまで持ち込むことは無かった。

自分たち夫婦との関係を入り口にしてどんどん堕ちていき……最終的に離婚をしたり実生活に支障が出た夫婦もいたようだが、それは関係が終わった後のことで、結城や理沙子が直接手を下したことは無いはずだ。

それとも理沙子にはまだ自分の知らない一面があるのだろうか?
先日の、独身時代の恋人に関する話はまだ聞けていなかった。

「そういえば、レストランの方にも取り立て屋が来るらしいわよ? 可哀想よねえ……電話で熊ちゃんが撃退してあげたらしいけど」

「……取り立て?」

「あらあら、知らないの~? 優雨も薄情な女ねえ。貴方に相談もしないなんて」

「闇金か……なぜ……」

「良介が会社のお金を使い込んでいたらしいのよ。デートの時にやたらと羽振りがいいと思ったら……」

あの男は全く……どこまで優雨を困らせれば気が済むんだ……!
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