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それを、口にすれば
第13章 思いやるということ
激しく憤るのと同時に、そんな大事なことに気付いてやれなかった自分にも腹が立つ。そしてその原因となったかもしれないのに、目の前で愉しそうに笑っている妻にも……。

もちろん、優雨から相談を受けなかった寂しさもあった。

闇金の取り立てとは……優雨は大丈夫だったのだろうか。
きっと傷付き、疲れ果てているだろう。

眉をひそめる結城を見て、理沙子は口もとの笑みを隠そうともしない。
やはり、この状況を心底楽しんでいるのだと結城は理解した。

隣り合った部屋で、毎週のように時間を過ごし……理沙子も、今までの夫婦たちに接するのとは少し違った様子――例えば、友情の様なものを感じながらあの二人と付き合っていると感じていたのは間違いだったのか。

「……友人ではなかったのか?」

「え?」

「ゲームを楽しんでいるような顔をしているよ。友人が……健気に頑張っているのに、なんで黙って見ていられるんだ」

珍しく思ったことを口にしてしまう結城を理沙子は嘲笑った。

「あははは……! 健気ですって? そんな風に思ったこと無いわ。それに友人だなんてとんでもない。もし本当に〝健気な友人〟だったら……あっちの方こそ私に黙っていたらいけないことがあるんじゃないかしら!」

そう言い捨てて理沙子は部屋を出て行った。
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