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それを、口にすれば
第15章 穢れた時間
待ち合わせ場所までは、良介が送ってくれることになっていた。
車に乗ってからも、鼻歌交じりに運転する良介のテンションは高いままだ。

ずっと家に閉じこもっていたから、外に出られたのが嬉しいのだろうか……。

そんなことを思いながら、少しの緊張を抱えたままの優雨は視線を窓の外に移す。
テンションの高い良介とは逆に、優雨は先ほどから不思議と眠くて堪らなかった。

ふああ……と大きなあくびまで出てしまう。
眠気覚ましにと、仕事の日にも持ち歩いている小さなボトルの中のハーブティーを一口飲む。
毎朝、自分用に良介のものとは別に淹れるものだ。

しかし、いくら飲んでも眠気は増すばかりで……優雨は意識が朦朧として来てしまった。
そんな優雨を見て、良介が声を掛ける。

「……30分ぐらいかかるから、眠っててもいいぞ」

昨日からの良介は、まるで別人のようだ……
いつもなら、助手席で少しでも眠そうにするのを見ると怒鳴り散らすというのに。

……結城への気持ちはもう戻れないところまで来ている。
いま良介の良い部分を見せられると、罪悪感が膨れ上がり、優雨は申し訳なさに押しつぶされそうになった。

「あなた、ありがとう……」

なのに、こんな妻でごめんなさい……
そう心の中で呟きながら、優雨は深い眠りへと落ちて行った。






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