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それを、口にすれば
第15章 穢れた時間
「イッてるんじゃないのか?」

「淫乱なおマメも剃っちゃえよ!」

信じられないような声が飛び交い始める中、優雨はひたすら耐え続けた。

「よおし、これでいいか。あとは泡を……」

今度は主任が水の入ったボウルを差し出すが……しかし、店長がそれを受け取ることはなかった。

「おい、そこの犬。こっちへ……」

急に呼ばれた格好の良介だったが、その顔は優雨が想像するような戸惑いや恐怖ではなく、悦びを湛えパッと明るく輝いていた。

優雨の足元まで移動してまた大人しく正座をする良介に、店長が囁く。

どうやら、店長には観客に聞かせていい話と聞かせたくない話があるらしい。
それが〝演出〟というものなのかもしれないが……

「シェービングクリームの匂いが苦手なんだ。お前の舌で綺麗に隅々まで……分かるよな?」

良介の目の前には、剃毛されたばかりのツルツルの妻の性器がライトに照らされている。

「あなた、やめて……見ないで……なんで……なんで何も言ってくれないの?」

「……」

良介は何かを言いたそうにしている。
あの気難しい夫が、食用でもないクリームを……しかも妻が無理やり剃毛された後処理のために口にするなんて、絶対にする筈がない。

何かの答え……または反論を口にしてくれそうな気がして、優雨は更に訊ねた。
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