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それを、口にすれば
第16章 愛しい名前
『え~皆様……本日は少し変わった趣向となりましたが、ショーはここで終了となります。これからも〝くまざき〟をどうぞご贔屓に……! どうぞお帰りはあちらの――』

主任が素早くライトを切り、観客達を地上へ続く階段へと促す。

「え……何? お芝居?」

「でも血が……」

突然の幕切れに客たちは戸惑いを口にするが、ステージとなっていた一角は暗く静まり返ったままだ。
なかなか立ち去らない客を見て、立ち上がったのは理沙子だった。

「こちらですわ……どうぞこちらにいらして下さい」

最後まで残っていた客も、美しい容姿の理沙子に強引に誘い出される。

観客の姿が無くなり、主任が再びライトを点灯すると……そこには、苦しむ店長と縛られたままの良介、そして意識を失った状態の優雨が仰向けに倒れていた。

そこに理沙子が再び戻って来たのは、主任が店長の介抱を始めてしばらくしてからのことだ。

「あ~あ、熊ちゃんったら情けないわねえ。なかなか見応えがあったのに台無しだわ。S男の流血シーンを見たって……ねえ」

呆れたように言いながら近付いて来る理沙子を見て、苦しそうな様子で転がっていた良介は顔を輝かせて声を上げた。
後ろ手に縛られたまま、度重なる射精で身体中を汚して……その姿は見るに堪えない。

「理沙子さん……ほど……解いて……」

良介にとって、理沙子は女王であり……この世界で一番美しい女神だ。
そして、この場にいる唯一の味方の筈だった。

しかし、嬉しそうに笑う良介に対して、理沙子はその視線すらくれてやることは無かった。
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