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それを、口にすれば
第3章 淫らな食べもの
(私の勝ち……?)
悪戯っぽく微笑む結城の言葉に、単純だとは思いつつも優雨は嬉しくなった。
良介は、結城夫妻の前でもよく優雨を小馬鹿にする態度を取り、そんな時はいつも結城がさり気なく助け舟を出したり慰めたりしてくれるのだ。
素敵な男性だな……と改めて思ってしまう。
口に出しては言えないけれど。
結城の気配りの素晴らしさは、その仕事に大きく関係しているのではないかと改めて思う。
素人の優雨から見ても、結城には人や物を見る確かな目、社交性、そして円滑に物事を運ぶ能力や度胸……そんなものが備わっているような気がした。
そしてそんな結城を前に大風呂敷を広げて話をする夫を見て、優雨はいつもいたたまれない思いをするのだ。
今は良介の悪い面ばかりが目についてしまう優雨だが、結婚した時はもちろん良介を愛していた。
いや、そればかりか……尊敬すらしていた。
――優雨が短大に入学した夏に、両親は事故で亡くなってしまった。
保険金のお陰で優雨は無事短大を卒業し、たった一人の肉親となった弟も、好きだった写真の勉強を止めずに済んだ。
しかし……残されたものはただそれだけだった。
頼れる親戚もいない、不安な日々。
卒業後は地元の信用金庫に就職したが、元々人見知りだった優雨は特に親しい友人もできず、人目を忍んでは涙を流すことが続いた。
そんな時、取引先の会社の客として現れたのが良介だった。
両親の死から一年が経ち、少しだけ余裕のできた優雨の心に良介は滑り込んできた。
そして良介の会社で配置換えがあり、優雨とは仕事上の接点が無くなってしまうという時に突然プロポーズをされ、優雨はすぐに受け入れた。
その異動も、実は良介の不祥事によるものだったと後で知るのだが……。
二十一歳という若さで決めた、出逢って三ヶ月でのスピード婚。
優雨の周りには、結婚の許しを得たり、相談をしたりする大人はいなかった。
当時の優雨にとって、良介こそが身近で最も尊敬できる大人の男性であり、そんな良介に求婚された時は喜びしか感じなかったのだ。
悪戯っぽく微笑む結城の言葉に、単純だとは思いつつも優雨は嬉しくなった。
良介は、結城夫妻の前でもよく優雨を小馬鹿にする態度を取り、そんな時はいつも結城がさり気なく助け舟を出したり慰めたりしてくれるのだ。
素敵な男性だな……と改めて思ってしまう。
口に出しては言えないけれど。
結城の気配りの素晴らしさは、その仕事に大きく関係しているのではないかと改めて思う。
素人の優雨から見ても、結城には人や物を見る確かな目、社交性、そして円滑に物事を運ぶ能力や度胸……そんなものが備わっているような気がした。
そしてそんな結城を前に大風呂敷を広げて話をする夫を見て、優雨はいつもいたたまれない思いをするのだ。
今は良介の悪い面ばかりが目についてしまう優雨だが、結婚した時はもちろん良介を愛していた。
いや、そればかりか……尊敬すらしていた。
――優雨が短大に入学した夏に、両親は事故で亡くなってしまった。
保険金のお陰で優雨は無事短大を卒業し、たった一人の肉親となった弟も、好きだった写真の勉強を止めずに済んだ。
しかし……残されたものはただそれだけだった。
頼れる親戚もいない、不安な日々。
卒業後は地元の信用金庫に就職したが、元々人見知りだった優雨は特に親しい友人もできず、人目を忍んでは涙を流すことが続いた。
そんな時、取引先の会社の客として現れたのが良介だった。
両親の死から一年が経ち、少しだけ余裕のできた優雨の心に良介は滑り込んできた。
そして良介の会社で配置換えがあり、優雨とは仕事上の接点が無くなってしまうという時に突然プロポーズをされ、優雨はすぐに受け入れた。
その異動も、実は良介の不祥事によるものだったと後で知るのだが……。
二十一歳という若さで決めた、出逢って三ヶ月でのスピード婚。
優雨の周りには、結婚の許しを得たり、相談をしたりする大人はいなかった。
当時の優雨にとって、良介こそが身近で最も尊敬できる大人の男性であり、そんな良介に求婚された時は喜びしか感じなかったのだ。