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それを、口にすれば
第3章 淫らな食べもの
「どうしました? 優雨さん」

知らず知らずのうちにぼんやりと考え事をしてしまっていたようだ。

「あ……少し酔ったみたいです。本当に弱くて……ごめんなさい」

「優雨さんは少し謝りすぎですよ。それに、女性は少し酒に弱いぐらいの方がいい。トロンとした目をして……とてもセクシーですよ」

そう言って、結城は牡蠣のコンフィを自分の皿に取った。

セクシーなんて……そんなことを男性に言われたのは初めてだった。

そして奔放な理沙子とは違って、結城が性的な話をするのも初めて聞いた。

普通の感覚からすれば性的でもなんでもない会話かもしれないが、いわゆる合コンやグループ交際すらしたことがない優雨にとって、結城の言葉は十分に刺激的だった。

やはり自分は結城のことが好きなのかもしれない……。

きっと、他の男性にこんなことを言われたら気分が悪くなるだけのような気がする。
目を逸らそうとすればするほど、結城の存在は優雨の中で大きくなるようだった。

「……旨い! 優雨さん、これは本当に旨いですね。プリプリとして、舌触りも最高だ……」

「良かった……!」

料理のことなら緊張せずに話せる。
優雨は、低温でじっくりと煮るために炊飯器を使ったことなどを場違いなほど熱心に話し始めていた。

牡蠣に話題が移ったのを見て、理沙子もまた感嘆の声を上げ、牡蠣をシェアするスプーンに手を伸ばす。

「これ最高よねえ! 私たち、優雨の手料理を毎週本当に楽しみにしているのよ」

「何をいただいても、店で出してもおかしくないレベルだと感心しているんですよ」

しかし、自分の妻が褒められるのを見て、喜ぶどころか拗ねたような態度を取ってしまうのが良介という男だった。
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