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それを、口にすれば
第3章 淫らな食べもの
「……これぐらいしか能が無いからなあ、お前は」
こういう子供っぽいところが嫌いだった。
良介を見つめる目が、思わず冷たいものになってしまう。
理沙子だったら、こういう時に上手に切り返すことができるのだろうか。
そもそも、結城が妻を侮辱するような言葉を口にするとは思えないが……。
「なんだその目は……第一、俺が生臭いものが嫌いなのを知ってるだろう!」
興奮した時の癖で、口の端に溜めた唾を飛ばしながら良介が声を荒げる。
良介が貝類をあまり得意としていないことはもちろん知っていたが、オイル煮ならもしかしたら良介の口にも合うかもしれない……献立を考える際、優雨は良介のことも忘れてはいなかった。
そして実際に味見した時にも、見事に生臭さは消えていたのに。
そう話そうかと優雨が思ったその時、良介はスプーンで牡蠣を一つすくい、さも嫌そうな顔をしてガチャンと皿に叩きつけた。
オイルが跳ね、優雨の手元を濡らす……。
(ひどい……)
なんて恥ずかしいことをするのだろう。
自分のことなんて愛していないくせに、嫉妬だけはするのだ。
涙が零れてしまいそうになったその時、初めて聞く強い調子で結城が声を上げた。
「良介さん、それはマナー違反だ」
聞いたことのない、怒りを秘めたようなその声音に場の空気は凍り付く。
常に穏やかな空気を纏っている結城のそんな態度を見るのは初めてだった。
その様子に、さすがの良介も黙り込む。
自分より弱いものにだけ強く、権威のあるようなものの前では途端に弱くなってしまうのだ。
こういう子供っぽいところが嫌いだった。
良介を見つめる目が、思わず冷たいものになってしまう。
理沙子だったら、こういう時に上手に切り返すことができるのだろうか。
そもそも、結城が妻を侮辱するような言葉を口にするとは思えないが……。
「なんだその目は……第一、俺が生臭いものが嫌いなのを知ってるだろう!」
興奮した時の癖で、口の端に溜めた唾を飛ばしながら良介が声を荒げる。
良介が貝類をあまり得意としていないことはもちろん知っていたが、オイル煮ならもしかしたら良介の口にも合うかもしれない……献立を考える際、優雨は良介のことも忘れてはいなかった。
そして実際に味見した時にも、見事に生臭さは消えていたのに。
そう話そうかと優雨が思ったその時、良介はスプーンで牡蠣を一つすくい、さも嫌そうな顔をしてガチャンと皿に叩きつけた。
オイルが跳ね、優雨の手元を濡らす……。
(ひどい……)
なんて恥ずかしいことをするのだろう。
自分のことなんて愛していないくせに、嫉妬だけはするのだ。
涙が零れてしまいそうになったその時、初めて聞く強い調子で結城が声を上げた。
「良介さん、それはマナー違反だ」
聞いたことのない、怒りを秘めたようなその声音に場の空気は凍り付く。
常に穏やかな空気を纏っている結城のそんな態度を見るのは初めてだった。
その様子に、さすがの良介も黙り込む。
自分より弱いものにだけ強く、権威のあるようなものの前では途端に弱くなってしまうのだ。