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それを、口にすれば
第4章 恥ずかしいお願い
二十二時を回り……リビングのゆったりとした黒皮のソファーに場所を移し、四人は酒を飲み続けていた。

結城家のインテリアは、決して華美過ぎず、でも本当に質の良いものを選んでいるのだろうなと優雨は常々思っている。
このシンプルで座り心地のいいソファーも、初めてこの部屋に来た時に良介が値段当てをしていたが……はっきりとした答えは分からなかったものの、数十万はするだろうと思われた。

ふと気づけば、四人はまた二組に分かれて話し込んでいた。

L字のソファーの広い方では良介と理沙子が音を消したノートパソコンをいじり、クスクスと笑い合いながら何かを見ていた。
不自然なほど密着して、画面を隠すようにする二人……。
普通なら何を見ているのか気になりそうなものだが、優雨は不思議と気にならなかった。

それよりも、ソファーの狭い方で並んで腰かけている結城との距離のことに意識がいってしまう。
いつもより近く、膝と膝が触れ合ってしまいそうだ……。

そして結城の様子も、普段よりも口数が少ないように思えた。

どうしたらいいのか分からない優雨は、飲み過ぎてはいけないと思いつつもまたワイングラスに手を伸ばしてしまうのだった。

いつもの結城は饒舌で、良介のことも適度に持ち上げてくれる。
決しておしゃべりという訳ではなく、ホスト役としてのサービスなのだろう。
そしてそのお陰で良介はいつも気持ちよくこの時間を過ごせているのだ。

彼ほどの人物であれば、様々な付き合いがあり人生経験も豊富なはずで……良介の薄っぺらいその話の中身に本気で感じ入っているとはとても思えなかった。
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