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それを、口にすれば
第5章 封じられた夢、封じられた心
処女だった自分を、良介がまるで宝物のように愛してくれたのはつい八年ほど前のことなのに……まるで世界が変わってしまったみたいだ。

もっとも、二人がセックスレスに陥ったのには原因がある。
なかなか子供を授からなかったのだ。

優雨の方は結婚当初から子供を持つことを切望していた。
両親に愛された記憶が、今度は自分でも温かな家庭を持ちたいという強い想いに繋がったのだ。

結婚以来ずっと努力は続けてきたが、その努力は皮肉なことに夫婦関係に大きな亀裂を生む結果となってしまう。

毎月繰り返される義務のようなセックス……。
危険日が近いとわかると、良介が仕事で疲れていても毎日セックスした。

性の知識が無い優雨から見ても良介は淡白な方であったし、優雨にももちろん性技などない。
そのうち二人ともお互いに対してあまり反応しなくなり……ローションを使って無理やりにでも結合するということが続いた。

そんな生活が2年ほど続き、優雨は精神的にかなり追いつめられていた。
月のものが予定通り訪れるたびに落胆することの繰り返し……。
そして良介は優雨を女としては見れなくなっていった。

勃起しなくなってしまったのだ。

ショックを隠すためか、全てを優雨のせいにして現実から逃げる良介と、良介のことは気遣いつつも、夢を捨てたくない優雨……。
二人の距離はどんどん離れて行った。

そして、優雨が意を決して不妊治療の病院に行ってみないかと相談したところ……良介はそこまでするのは絶対に嫌だと言った。
恥をかくのは嫌だし、そのためのカネなんてびた一文出さないと。

そのうちに、もともと子供なんて欲しくなかった、お前が勝手に欲しがったんだろう。
今まで付き合ってやっただけ有難いと思え……というようなことを言い始め、優雨は深く傷付いた。
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