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それを、口にすれば
第5章 封じられた夢、封じられた心
「今日もその気はないみたいだね」

結城の瞳が冷たい。

普段の結城は優しく紳士的な男性に違いなかったが、優雨を責めるときの結城はゾッとするほど冷たい表情を見せるときがあった。

「フフ……私も嫌われたものだな」

違うんです……!
そう、叫びそうになる。

身体も心も結城を求めてしまっているのが分かる。
本当は抱かれたい……でも、優雨のなかのもう一人の優雨が全てを許してはいけないと叫ぶのだ。

今までの優雨にとってのセックスは、母になることへの強い憧れと切っても切れないところにあった。

だから夫以外の男性と肉体関係を持つということは、結果的に母になることをどこかで諦めてしまうような気がして……それも怖かった。

また、結城と理沙子が今までにもこのようなことをしてきたらしいということもとても気になる。

(二人にとっては遊びなのかもしれない……)

優雨はセックスを遊びに出来るほど大人でもないし、遊びにしたいとも思えなかった。

悪魔のように冷酷に自分を責める結城と、普段の紳士的な結城……一体どちらが彼の本当の素顔なのだろう。

そして、自分はどちらの結城に心惹かれてしまうのだろう。
もちろん紳士的な結城だと思いたいが、心のどこかでは……?

けれどこの状況で、そんな自己分析ができるほどの余裕は優雨には無い。
どうにもならない感情に、知らず知らずのうちに涙がにじんだ。
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