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それを、口にすれば
第5章 封じられた夢、封じられた心
「優雨…………」

優雨の瞳を覗き込むような結城の視線。
先程までの冷たさは消えている。

その思慮深げな眼差しも優雨を惹きつけてやまないもののひとつだった。

そして、初めて会った時から優雨の心に絡みついて離れなかったあの声で、予想もしていなかったことを問われた。

「優雨の一番の願いは……何?」

「……んん……はぁっ……ね……願い……?」

「うん……優雨のその頑なな心を占めているものはなんだろう?」

願い……心を占める……。

「口にしてみれば、叶うことだってあるかもしれない。一人では抱えきれないこともあるだろう。時には誰かに甘えていい……もしくは利用したっていいんだ」

このような状況でそんなこと……。

結城が相手でなければ、考える気にすらならなかったかもしれない。考えても気付けなかったかもしれない。

でも今、それは自然と溢れ出してきていた。
夢。自分の夢は……。

「お母さんに……お母さんになりたくて……」

そう口にしたら、全てがはっきりしたような気がした。

結城の前で女になりたい自分と、ずっと願っていた母親になりたい自分。
それが自分の中でぶつかり合っているのだ。

女性なら誰しもそういう面があるのかもしれないのに、自分はなぜこんなにも苦しくて……そして、なんて不器用なのだろう。
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