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それを、口にすれば
第8章 空を駆ける言葉
「結城さん……」

一人になった部屋で、声に出してその名を呼んでみる。

良介と理沙子が何をしていようがもう構わない。
ただ、結城に会いたい……。

もうそろそろ帰国する頃だろうか。
理沙子に訊いたら分かることだろうが、最近の優雨は理沙子には極力会わないようにしていた。

ここのところ、理沙子から悪意のようなものを感じる気がする。
もしかしたら自分が何か気に障ることをしてしまったのかもしれないが……それを確かめる勇気はなかった。

どんなことでもいい。結城と少しだけでも話がしたい。
読んでもらえなくてもいいから、何かを伝えたい……。

『結城さん、会いたいです』

あふれ出した思いをメールにして送ってみると、いつもと同じようにすぐ送信される。

「あれっ?」

当然のことだったが、緊張していた優雨は拍子抜けした。

なんでもっと早く送らなかったのだろう?
すぐに着くのだろうか。それとも何時間かかかるのか?

そんなことを考えていると、メールの着信音が鳴った。

『返事が来るなんて珍しいな。無視しているのかと思っていたよ』

(そんなことないですっ……だって、メールのこととか分からなくて……)

慌てて返信を打つ。

『ごめんなさい、どうしたらいいか分からなくて』

すると優雨の言葉を勘違いしたのか、結城からは意外な言葉が返って来た。
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