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それを、口にすれば
第8章 空を駆ける言葉
しかし、翌朝……生理が始まった。

「あ……」

トイレで小さな声を漏らした後、ほら、またじゃない……と心の中で呟く。
良介の言う通りだった。
同じことを何度も繰り返す自分が滑稽で、ため息が出る……。

夫との間に子供が授かりたくて一喜一憂していた日々。
なのに、今は心のどこかでホッともしていて……。

自分の滑稽なところは何も変わっていないのに、良介との関係はいつからこんなにも変わってしまったのだろう。

あの頃のような気持ちはこの先の人生で二度と取り戻せないと改めて感じ、優雨は不意に泣きそうになった。

押入れの隅にあるアルバムを出してみる。

その中には、ウェディングドレスに身を包み幸せそうに笑う若い自分が写っていた。
良介も屈託のない笑顔を見せ、優雨の腰に手を回している。

恋に恋したまま結婚した、若かった自分……。
けれど、あの頃は確かに良介を愛していると思っていたのだ。

でも、何もかもがもう消えてしまった。

そう思うと、あの頃の自分が憐れで、愚かしくて……。

そして、良介の方は……一体どうだったのだろう? とも思う。
幸せだったあの頃、本当に愛してくれたことはあったのだろうか。

考えても出ない答えを前に、優雨は涙を堪えて夫のための朝食を作ることにする。
いつまでも考え事をしている暇はなかった。






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