この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
それを、口にすれば
第9章 けれど、愛してる
「あの日……初めて会った日、誕生日だって優雨は言っていただろう」

そう。独りでケーキを焼き、結城との初対面はそのケーキを口につけたままで……。

その情景を思い出して優雨は頬を赤く染めた。

「あの時、部屋の奥からシナモンの香りがしていた。ドアが開いた瞬間にクッキーかケーキでも焼いたばかりなのだなと思ったよ。その後、ケーキだったとすぐに分かった訳だけれど」

結城が、口もとに付いていたケーキの欠片を口にしてしまったことを思い出すと、思わず笑みがこぼれる。
目の前で同じく微笑を浮かべる結城を見て、優雨はその優しさに涙が出そうになった。

今思えば、あの時からもう結城に心奪われていたのかもしれない……。

結城は余計なことは話さないし、普段はとてもクールなのに……なんて優しいのだろう。
何も言わなくても、自分のことをきちんと見てくれている気がする。

なのに良介は……。
あの日の夕食後、久しぶりにシナモンケーキを出してみたけれど、良介は嫌そうな顔をして口に運んだだけで、その日が妻の誕生日であることには気付かなかった。

優雨にとって母との想い出のつまった大切なケーキを、ただ流れ作業のように口へ放り込んだだけだ。

「私……私……」

この間良介に抱かれた夜から出張中のことまで……会ったら色々な話をしたかったのに。

胸が詰まって、何から話せばいいのか分からない。
ただ一つ言えることは、妊娠しなかったことはやはりショックだけれど、良介の子供が欲しかった訳では決してないということだった。

結城のワインを飲む手が止まった。
/219ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ