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それを、口にすれば
第9章 けれど、愛してる
「無理して話さなくてもいい。あの日は、勝手なことをして……本当に申し訳なかった。期待させるようなことを……優雨の意見も聞かずに」

どういうことだろう?

「優雨の夢が母親になることだったら、私との関係が深まることは邪魔になるような気がしたんだ。かと言って、良介さんと優雨がうまくいっている様にはとても見えない。だから……あんなことを。本当に悪かったと思っているよ」

「お気遣いは嬉しいけど……お願いです。もう、あんなこと絶対に嫌です。私、はっきりわかったんです。子供は欲しかったけど……こんな気持ちで今、あの人の子供を授かっても……」

どうしたらこの気持ちをわかってもらえるだろう……。

『抱かれたくなったら、そうだな……奴隷にしてくださいとでも言ってもらおうか』と、冗談めかした様子で言っていたことがあった。

ノーマルなセックスしかしてこなかった優雨には、奴隷というものが何なのか分からなかったが、愛する結城にどうしても抱かれたい……その気持ちだけは本物だった。

それに結城が自分を、例えば性の道具の様に考えているなどとはやはり思えなかった。
結城が理沙子と過去にどんなことをしてきたとしても、過去は過去……そう思いたい。

「私、結城さんを愛してます……」

思わず口をついた言葉。

どうしても我慢できなかった……でも、結城はどう感じただろう?
こんな大それたことを……。

現に、結城は言葉を失っているように見える。
ほんの一瞬のことなのに、優雨には何十秒も経っているように感じられた。
優雨の頬に結城の手の平が触れる。
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