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伝わらない想い
第9章 伝えたい想い
すっかり日が昇ってから俺たちは動き出した。
自分の支度だけ済ませて、蘭のアパートに二人で向かう。

「蘭、本当に良いのか?」

俺は、なんとか証拠を見つけて犯人たちを警察に突き出してやりたかった。
でも、それを蘭は拒んだ。

「もう、忘れる…忘れたい…」

「....解った」
蘭がそう望むなら、俺が忘れさせてやる。
そう強く誓った。

蘭の手をぎゅっと握って歩く。
絶対にこの手を離さない。

.....。

アパートに着き、ガチャっと鍵を開け、部屋の中に入る。

その瞬間、すーっと風が通った。

そこは、あんなことがあったにも関わらず、今は元の部屋の空気に戻っていた。

でも、椅子が倒れていたり、床にティッシュが落ちていたりと、所々に片鱗が残っていて。
緊張が走る。

「...」

「すぐ出よう」

今すぐ必要な物だけを鞄の中へ詰め込み、その部屋を後にした。

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