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恋いろ神代記~神語の細~
第5章 真雪
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絞り出すような声で、澪は続けた。
「玉衣に私が必要でなかったように、その方にも私は必要ではありません……、いいえ、その方が御令孫の寵妃であるのなら、むしろ私など無いものの方がいい。だってあのとき、私のせいで玉衣は……
玉衣は、変わってしまった……!
変わらなければ、あの子は今だって淡島随一の巫女だった! 水蛭子(ひるこ)を迎え、すべての巫たちの母たる洞主として、今も奥社に坐すはずだった! 私に、あと少しでもましな思慮があれば──きっと此度の凶行だって、起きなかったのです!
──なのにあなた様は、今さら私にどのような顔をしてその巫女姫に見(まみ)えよと仰るのです。それとも、会えば御令孫に斬り捨てていただけるのですか。いいえ、それよりもあの子──大弟はさらに、神剣よりも鋭い眼差しで私を射貫くでしょう。そんな彼に、私は何を申し開けばいいのですか!!」
そこまで一遍に吐き出すと、澪は赤子を抱いたまま畳に突っ伏すようにして咳き込む。長らく意思を紡ぐことを忘れていた喉が荒れ、むせたようだった。
「澪様──」
「よい」
眞前が立ち上がる前に伍名がそれを留め、代わりに自身が隣に膝をつく。親が子にするようゆっくりと背を撫でさすってやれば、薄衣越しに、浮いた骨の感触が手のひらを通して伝わってきた。
「玉衣に私が必要でなかったように、その方にも私は必要ではありません……、いいえ、その方が御令孫の寵妃であるのなら、むしろ私など無いものの方がいい。だってあのとき、私のせいで玉衣は……
玉衣は、変わってしまった……!
変わらなければ、あの子は今だって淡島随一の巫女だった! 水蛭子(ひるこ)を迎え、すべての巫たちの母たる洞主として、今も奥社に坐すはずだった! 私に、あと少しでもましな思慮があれば──きっと此度の凶行だって、起きなかったのです!
──なのにあなた様は、今さら私にどのような顔をしてその巫女姫に見(まみ)えよと仰るのです。それとも、会えば御令孫に斬り捨てていただけるのですか。いいえ、それよりもあの子──大弟はさらに、神剣よりも鋭い眼差しで私を射貫くでしょう。そんな彼に、私は何を申し開けばいいのですか!!」
そこまで一遍に吐き出すと、澪は赤子を抱いたまま畳に突っ伏すようにして咳き込む。長らく意思を紡ぐことを忘れていた喉が荒れ、むせたようだった。
「澪様──」
「よい」
眞前が立ち上がる前に伍名がそれを留め、代わりに自身が隣に膝をつく。親が子にするようゆっくりと背を撫でさすってやれば、薄衣越しに、浮いた骨の感触が手のひらを通して伝わってきた。
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