この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
恋の行方を探してください【完結】
第31章 【三十一話】父と同じセリフ
それはかなり、マズイのではないだろうか。
「だから今から、カナヤマなる人物がいるかどうか、確認しに行くんだろう?」
「そうですね」
由臣の指先は相変わらず氷のように冷たかったが、表情は無理をしているようではなかったので、美哉は少し、ホッとした。
事務棟から工場エリアへは、歩いて五分ほどの距離があった。車で移動した方が早かったが、由臣はあえてそうしなかったようだ。
「こうやって二人で歩いていると、なんだかデートしているみたいだな」
「由臣さんってほんと、女性とお付き合いをしたことないってのがよく分かりました」
「え、なんで」
「仕事中ですよ。しかもただ歩いているだけですよ? これでデートなんて言ったら、速攻で振られますよ」
「えー、俺は二人で一緒にいられるのなら、どこだっていいんだけどなぁ」
「…………」
由臣が何気なく口にした一言で、美哉は急に父親のことを思い出した。父もよく、母と二人ならば、場所はどこでもいいと言っていたのだ。まさか父と同じセリフを口にする人物と出会うとは思わず、美哉は思わず由臣を見上げた。
「どうした、今のセリフで惚れた?」
「いえ。父と同じセリフだったので、驚いていただけです」
「ほー。さすが美哉のお父さんだな、好きな人が側にいればそれでいいって、よく分かっている」
「…………」
それから美哉は、無言だった。
由臣に手首をつかまれたまま、淡々と歩く。いつまで経っても由臣の指先は冷たいままで、なんとなく緊張が伝わってきて、美哉まで緊張してきた。
そしてようやく工場エリアに到着した。工場の入口には、工場内の地図が張られていた。
工場エリアは、原材料ゾーン、加工ゾーン、出荷ゾーンの三つのゾーンに分かれている。この中で一番広いのは、加工ゾーンだ。
「検品課は……と。あぁ、やっぱり出荷ゾーンになるのか」
「今、ここですよね?」
「あぁ、そうだな。端まで歩いていかないといけないな」
「それにしても、広いですね」
「かなり多くの商品を扱っているからな。外から回って行こう」
「だから今から、カナヤマなる人物がいるかどうか、確認しに行くんだろう?」
「そうですね」
由臣の指先は相変わらず氷のように冷たかったが、表情は無理をしているようではなかったので、美哉は少し、ホッとした。
事務棟から工場エリアへは、歩いて五分ほどの距離があった。車で移動した方が早かったが、由臣はあえてそうしなかったようだ。
「こうやって二人で歩いていると、なんだかデートしているみたいだな」
「由臣さんってほんと、女性とお付き合いをしたことないってのがよく分かりました」
「え、なんで」
「仕事中ですよ。しかもただ歩いているだけですよ? これでデートなんて言ったら、速攻で振られますよ」
「えー、俺は二人で一緒にいられるのなら、どこだっていいんだけどなぁ」
「…………」
由臣が何気なく口にした一言で、美哉は急に父親のことを思い出した。父もよく、母と二人ならば、場所はどこでもいいと言っていたのだ。まさか父と同じセリフを口にする人物と出会うとは思わず、美哉は思わず由臣を見上げた。
「どうした、今のセリフで惚れた?」
「いえ。父と同じセリフだったので、驚いていただけです」
「ほー。さすが美哉のお父さんだな、好きな人が側にいればそれでいいって、よく分かっている」
「…………」
それから美哉は、無言だった。
由臣に手首をつかまれたまま、淡々と歩く。いつまで経っても由臣の指先は冷たいままで、なんとなく緊張が伝わってきて、美哉まで緊張してきた。
そしてようやく工場エリアに到着した。工場の入口には、工場内の地図が張られていた。
工場エリアは、原材料ゾーン、加工ゾーン、出荷ゾーンの三つのゾーンに分かれている。この中で一番広いのは、加工ゾーンだ。
「検品課は……と。あぁ、やっぱり出荷ゾーンになるのか」
「今、ここですよね?」
「あぁ、そうだな。端まで歩いていかないといけないな」
「それにしても、広いですね」
「かなり多くの商品を扱っているからな。外から回って行こう」