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恋の行方を探してください【完結】
第43章 【四十三話】伊吹もお見合い

*
若葉小屋に戻った二人。
由臣は五階の執務室へ向かい、美哉は伊吹を探して事務所を彷徨っていた。
「伊吹ー?」
夕飯になれば会えるだろうが、どうしてもその前に会いたくなったのだ。
きっと、先ほど由臣に言われた言葉が気になっていたからだろう。
二階を見てもだれもいなくて、三階もいなくて、四階のキッチンに向かう途中の廊下に、伊吹がいた。
「あ、伊吹!」
「あら、美哉ちゃん」
外出先から帰ってきたばかりなのか、それとも今から出掛けるのか、男性の格好をして、スーツを着ていた。
「今からどこか行くの?」
「いや、帰ってきたところ。……お見合い」
「えっ。勝千代もお見合いするって言ってたけど」
「あー、やっぱりか」
「やっぱりって?」
「たぶん、吟太も今日、お見合い」
「…………」
「ぼくたちにようやく与頭が来たから」
「私……のせい、なの?」
「せいっていうか、決まってたこと。だから由臣は忠誠の儀を急がせたんだと思う」
伊吹の言っていることがよく分からなくて、美哉は首を振った。
「ぼくたち御庭番は、美哉ちゃんには悪いけど、本当は忠誠の儀なんてしなくてよかったんだよ」
「え」
「ただ『与頭に忠誠を誓います』って言えばいいだけだったから」
「……な、んで」
美哉は自分が今までやってきたことを全部否定されて、目の前が真っ暗になった。ふらりと揺れれば、伊吹が慌てて美哉の身体を支えてくれた。
「美哉ちゃんが強く拒否をしたら、あんなこと、しなくてよかったんだよ」
「……でも!」
若葉小屋に戻った二人。
由臣は五階の執務室へ向かい、美哉は伊吹を探して事務所を彷徨っていた。
「伊吹ー?」
夕飯になれば会えるだろうが、どうしてもその前に会いたくなったのだ。
きっと、先ほど由臣に言われた言葉が気になっていたからだろう。
二階を見てもだれもいなくて、三階もいなくて、四階のキッチンに向かう途中の廊下に、伊吹がいた。
「あ、伊吹!」
「あら、美哉ちゃん」
外出先から帰ってきたばかりなのか、それとも今から出掛けるのか、男性の格好をして、スーツを着ていた。
「今からどこか行くの?」
「いや、帰ってきたところ。……お見合い」
「えっ。勝千代もお見合いするって言ってたけど」
「あー、やっぱりか」
「やっぱりって?」
「たぶん、吟太も今日、お見合い」
「…………」
「ぼくたちにようやく与頭が来たから」
「私……のせい、なの?」
「せいっていうか、決まってたこと。だから由臣は忠誠の儀を急がせたんだと思う」
伊吹の言っていることがよく分からなくて、美哉は首を振った。
「ぼくたち御庭番は、美哉ちゃんには悪いけど、本当は忠誠の儀なんてしなくてよかったんだよ」
「え」
「ただ『与頭に忠誠を誓います』って言えばいいだけだったから」
「……な、んで」
美哉は自分が今までやってきたことを全部否定されて、目の前が真っ暗になった。ふらりと揺れれば、伊吹が慌てて美哉の身体を支えてくれた。
「美哉ちゃんが強く拒否をしたら、あんなこと、しなくてよかったんだよ」
「……でも!」

