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恋の行方を探してください【完結】
第1章 【一話】美哉の不運
 それはこの男性の言うとおりであったけれど、どうして分かったのだろうか。

「名前は、宇佐見美哉(うさみ みや)。うさ耳か。それで、年齢は二十五歳」
「……え」
「勤めていた会社が倒産したせいで、寮を追い出されて、両親に頼りたくてもすでに他界しているため、行く当てがなくて街を彷徨っていた……と、こんなところか」

 まるで美哉のことを見てきたかのような男性の言葉に、美哉は思わず、呟いた。

「最近、変な視線を感じると思っていたけれど……あんただったのね!」
「は? なにを言っている。俺とおまえは初対面だぞ」
「じゃあ、どうしてずっと私のことを見ていたかのように、私のことに詳しいのよ! 説明しなさいよ!」

 美哉の言葉に、男性はにやりと笑った。その自信満々な笑みに、美哉は一瞬だけ、どきりと心臓が高鳴った。

「なぜって、俺は探偵だからさ」
「……答えになってないし」

 いや、むしろ探偵であるのならば、だれかに雇われて、それこそストーカーのように美哉のことを追いかけていても不思議はない。

「やっぱり、ストーカーじゃないの」
「失礼だな。俺はおまえを助けてやったんだぞ? 俺が助けなかったら、黒服を着た怪しい男たちに連れ去られていたぞ」
「…………」

 黒服を着た怪しい男たち、という言葉に、美哉はびくりと身体を震わせた。
 そうなのだ、最近、妙な視線とともに、たまに視界の端に黒服を着た男たちが入ることがあったのだ。

「あんたが雇ったんでしょ」
「いやいや、おかしいだろ、それ。俺、探偵。探るのがお仕事。それなのに、あんな怪しげな男を雇うわけがないだろう。そもそも、人件費が馬鹿にならんだろう」

 言われてみればそうなのだが、どうにも納得がいかない。

「なんで分かったのよ」

 そもそも美哉が行き倒れの憂き目に遭ってしまったのは、会社が倒産したせいでも、住む家がなくなったせいでもなかった。今日の宿はどうしようと街を彷徨っていたら、カバンをひったくられたせいなのだ。それがなければ、空腹で行き倒れるなんてことになっていない。

「ここに運び込むとき、気絶しているのにもかかわらず、盛大に腹の虫がなっていた。無理なダイエットをしているか、なんらかの事情で飯が食えなかったか」
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