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恋の行方を探してください【完結】
第1章 【一話】美哉の不運
 気絶していてもお腹が鳴っていただなんて、恥ずかし過ぎる。

「次に考えたのは、街中にいるにも関わらず、手荷物がなにひとつなさそうだというところから導かれる答えは、持っていた荷物はなくしたか、盗られたかのどちらかだ」

 美哉は感心して、小さくうなずいた。男性は続けた。

「不幸にも荷物をなくしても、帰る場所があれば、警察にでも寄って、交通費を借りて帰るはず。でも、どうやらそうした様子がない。で、あんたを見つけた近くの会社がつい最近、倒産したことを思い出したんだ」

 カバンをひったくられた後、会社に行ったらだれか知り合いに会えるかもと思って近くに行ったのだけど、黒服の、いかにもカタギではなさそうな男たちがいたため、遠巻きに見ていたのだ。美哉はそこでだれか知り合いが来るまで待つつもりで何時間かいたのだけど、あまりにもずっと同じ場所にいたため、黒服の男たちに見つけられて、追いかけられた。逃げたのだけど、あまりにもしつこくて、ようやく巻いたころには力尽きて……行き倒れてしまった。

「それにしても、用意周到だよなぁ。計画的に倒産させて、あっという間に乗っ取るんだもんなぁ」
「……え」
「おまえさ、おかしいと思わなかったのか」
「おかしいって、なにをですか」

 美哉の質問に、男性は呆れたようにため息を吐いた。

「どんな世間知らずの嬢ちゃんなんだ。おまえな、昔ならいざ知らず、今、倒産したからって、いきなり解雇されないし、ましてや、住んでいるところをいきなり追い出されるなんて、ありえないからな」
「そういう……もの、なんですか」

 美哉の言葉に、男性はまたもやため息を吐いた。

「どう考えたっておかしいだろう!」

 言われてみればおかしいのではあるが、それは美哉だけではなく、他の人たちも同じ状況だと思うのだが、どうなんだろうか。

「なるほど、天然すぎる。これはあいつも手こずっている訳だわ」
「あいつ……?」
「弓月当麻(ゆづき とうま)」
「え、なんでそこでいきなり弓月さんの名前が出てくるんですか」
「……天然だ、天然すぎる」
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