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第8章 【八話】気持ちいいことはイイコトだ

　説明なら、先ほど嫌と言うほどされたと思うのだが、まだあるのだろうか。

「確かに俺は、正式な与頭となる人が現れるまで、代理となっていた。そこまでは分かっているよな？」
「はい」
「それで、ようやく宇佐見美哉という、御庭番も認めた与頭が現れた訳だ」
「はいっ？」
「あいつら、アクが強いから、自分たちが認めた人間でなければ、与頭になってほしいと思わないぞ。しかも、あの古参で頭のかたい古坂が忠誠を誓った」
「…………」
「美哉は与頭がただのお飾りだと思っているかもしれないが、これから色々と仕事をしてもらわなければならない」
「仕事……ですか」
「そうだ。なんだ、本当に与頭ってのは肩書きだけだと思っていたのか？」

　そういうわけではないが、美哉は成り行きでうなずいたけれど、やはりどうして自分がという気持ちが大きい。

「それにだ、美哉ほど与頭にふさわしい人間はいないぞ」
「え……どういう、意味、ですか」
「普通、処女を失った次に、別の男とセックスなんてするか？」
「う……あれは！　由臣さんが中途半端に私を放置しておくからっ！」

　と言った後、美哉は自分の発言の恥ずかしさに気がついて、真っ赤になり、手で顔を覆った。これでは自分が淫乱ですと言っているようなものではないか。

「ほぉ？　中途半端」
「うぅ……」
「男が苦手といいながら、伊吹を襲ったのはそういうことか」
「うぅぅぅ～」
「そういうところが、与頭にふさわしいんだ」

　美哉は思った以上に真面目な声の由臣に驚き、顔を覆っていた手を離した。

「正直なところ、俺の内心は平静ではない」
「…………」
「一目惚れした相手が、目の前で寝取られるんだぞ。こっちの身になれよ」
「でも！」
「なんだ」
「……じゃあ、どうして私を放置したんですか」