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恋の行方を探してください【完結】
第13章 【十三話】コードネーム:うさ耳ってなんですか
 時計をチラリと見ると、十時まで五分ほど前だった。
 美哉は慌ててプライベートルームへ戻り、四階のキッチンに走って向かい、ヤカンとカップと茶葉とポット、牛乳をトレイに乗せて、二階へと向かった。
 二階に着き、ヤカンに水を入れて沸かしている間、ドアを開けると話し声が聞こえてきた。時計を見ると、十時を過ぎていた。依頼者が到着したようだ。
 ちょっと焦りながら準備をして、ようやく紅茶の用意ができたので、トレイに乗せて応接間へと向かった。

 ドアをくぐると、すぐそこは応接間。
 それは美哉は分かっていたし、先ほどもここを通ってプライベートルーム側へと行ったし、様子をのぞき見もした。それでも、どうしてだろう、由臣と依頼者と思われる女性が向かい合ってソファに座っている姿を見て、違う部屋に来てしまったのではないかと感じてしまった。
 もちろん、部屋の調度が変わってしまったというわけでも、なにかが移動したというわけではなく、間違いなく応接間であるのだけど、急激に温度が下がったような、そんな印象を抱いた。ちょうど雲が太陽を遮り、少し部屋が暗く見えたせいもあるのかもしれない。
 由臣は不遜な笑みを浮かべて、ソファに深く腰掛けて、ふんぞり返っていた。とてもではないけれど、依頼を受ける側の態度ではないのではないかと美哉は内心で思った。
 対する依頼人と思われる人は、ソファに浅く腰掛けて、ただうつむいているだけなのに、どうしてだろうか、ぞくりと背筋を凍らせるなにかがあった。

「し……失礼いたします。お茶をお持ちしました」
「あぁ、ありがとう。俺のはスティックシュガー三本で」
「三本……ですか」
「あぁ。これから頭を使うからな。糖分が必要だ」

 朝食の時は砂糖を入れずに飲んでいたような気がしたので、無糖派だと思っていたのだが、違っていたようだ。
 美哉は先に依頼者へソーサーと紅茶の入ったカップを出し、砂糖とミルクを添えた。
 一方の由臣用には、カップに紅茶を淹れた後、言われるがままに砂糖を三本入れて、ミルクをたっぷりと入れた。

「どうぞ」
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