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古傷
第1章 ・・・1
お昼に入った店は、イタリアンの店だ

お洒落なワインが並べられ夜はバーにもなるらしい
そこで大好きなクリームパスタを頼み、彼はやはり値段を気にしているらしく、一番安いボロネーゼを頼んだ

「そんな値段なんて気にしなくて良いのに」

「いや、奢っていただくのに高いものは」

「自分の彼女にも気にさせるの?」

「流石にデートとは違うだろう」

「あら、こんな綺麗な子を前にして浮かれてもくれないなんて、寂しい」
グラスの中のオレンジジュースを揺らしながら、首を傾げ、瞳を真っ直ぐ見つめる
意味はない、けど彼の反応が見たくて彼に興味があるように振る舞う
いや、実際は少しは興味がある。
自分が働いている所には来ないであろう人に会うのは久しぶりだから
「君は案外不真面目なんだな、そうやって男を落としてきたの?」

彼は困ったように眉を潜めて、水が入ったグラスを見つめてから瞼を閉じた

「君には感謝しているけど、君のお遊びに付き合うつもりはない。
そんな気持ちは、とうに忘れてしまったしね
次は他の人を口説くと良い。俺も男だから食事代くらい払わせて頂く
じゃあね、命の恩人さん。久しぶりに楽しかった」

と、彼は去っていってしまった。
グラスの中の氷が溶けて、軽やかな音がやけに耳に届いた
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