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天使さまっ!
第14章 続編 天国へと続く恋
落ちたハンドバッグから散らばるコスメや何か。硬い病院の床を音をたてて転がるその瞬間は、まるで氷水でもかけられたかのような。私と先生が驚いて離れたところで、今さら彼女の記憶は消えない。
――相馬華也。彼女はエリン先生の患者さんで、精神疾患を持つ。年齢はエリン先生の二つ上で、エリン先生を弟扱いしている。今日みたいな予約のない日に突然来るのは、エリン先生が受け持った初期の頃にはよくあったけれど。
バクバクと心臓がなる。私たちの関係がバレてしまったことで、私が病院を解雇されてしまうかもしれない。でもそれ以上に、一番問題なのは、彼女にトラウマを与えてしまったり、あるいは引金をひいてしまったり――つまりは患者さんにダメージを与えてしまうこと。それは本来私たちが一番してはいけないこと。
一瞬の間にたくさんの思考が頭を駆け巡った。下手に言い訳をして不信を植え付けてはいけない。誤魔化してはいけない。いけないことは何通りでも頭に浮かぶのに、唯一最善の選択肢がいつまでも浮かばない。