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天使さまっ!
第19章 センチメンタルジャーニー
打撲と捻挫で済んだのは、自分を庇ってくれた人がいたからだ。その人は今集中治療室にいる。何日たっても帰ってこない、意識不明の重体が続いていた。
ワゴン車を運転していた男は、最終的に電柱に追突し即死だったという。その後の調べで覚醒剤を服用していたことが判明した。ここ数日でこの事件の死者は二桁に増え、なおも危篤が続く被害者が他にもたくさんいた。
「天使先生、まだ意識戻らないのかい」
院内はどこも、嘆きや悲しみに満ちていた。
「こんなとき、天使先生ならお助けくださるのに」
私が。お祭りなんて誘わなければ。きっと今も、幸せだったでしょう。
聞こえてくるすべてが、この身を責めて。何故自分ではなくエリン先生が重体なんだろうと、何度も思った。
「百瀬さん。少しは眠ったほうがいいわ」
私を一番憎んでいるはずの婦長は、感情も見せない落ち着いた様子で、ずっと私を気にかけてくれる。それが何より辛かった。