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天使さまっ!
第19章 センチメンタルジャーニー
「ご一緒に旅をされていた頃ですか」
「んー。ナツカシイ。トオいムカシみたいだね」
目を細めたお父様が足を組み換えて、のんびりとした声で話す。
他愛のない話を出来るだけで、ずいぶん楽になる。いつも患者さんたちも、そうだったんだろうか。私はお父様に感謝をしながら話を続けた。
「エリン先生、小さなコドモのうちは腕力ないから。きっと力一杯必死だったんですよ」
優しくケア出来るのは迅速さを求めない状況下だけ。いつだってエリン先生が最善を尽くすことを知っている。
「ソウかもしれないね」
作業を続けるのを優しい眼差しでジッと見ていたお父様は、不意に言った。
「ねえシカコ。キミはタイムトラベルってシンじるかい」
「……タイムトラベル、?」
「そう、タイムトラベル。キヨコはそういうのワカラないタイプだろ、ハナシたことない。キミにトクベツ、オシエよう」
キョトンと手を止めた私が、まっすぐお父様を見つめ返す。不思議な沈黙。ポタンポタンと点滴の滴と先生の心臓のリズムが流れる。
「きよこ……。婦長の名前は確か『きょうこさん』です」
「オーぅ。キョ・ウ・コ。カノジョイチドもテイセイしない。シらなかった、ずっと。それはシツレイしたよ、どうしよう」
実は怒っているんだろうか、とかお父様はしばらくうろたえ、やがて話を元に戻した。