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天使さまっ!
第19章 センチメンタルジャーニー


先生とお父様のやり取りは続く。私だけ取り残されたみたくまったく状況が掴めない。傷口に止血シールを貼り終え私はナースコールでドクターを呼んだ。

点滴を止めて針を片付け、点滴のこぼれた床を拭きながらエリン先生を盗み見たけれど、先生はこっちに見向きもしなかった。目覚めたら最初に私の名前を呼んでくれる気がしてた。もう大丈夫って撫でてくれる気がしてた。まるで、私なんかエリン先生の心にいないみたい。


「……エリンは何語を話しているの」


駆け付けた婦長が冷静にエリン先生を観察してお父様に尋ねた。


「ポルトガルのコトバだね」

「そう。どうりでわからないわね」

「……なんて言ってるんですか?」


恐る恐る訊く私の声は震えていた。


「『リカルドのテアテをする』『カレはドコにいるのか』『ジブンはカレをカレのカゾクのモトへカナラずカエす』……」

「リカルド……?」


せわしくドクターが病室に来てエリン先生に声をかけたけれど、日本語がわからないみたいで先生はポルトガル語を話し続けた。ドクターが英語やドイツ語で話してもほとんど通じない。


「エリンは英語もドイツ語も話せたのに……」

「――おそらく記憶喪失ですね」


ドクターのため息が突き刺さった。


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