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天使さまっ!
第19章 センチメンタルジャーニー


記憶喪失。



私を見ない先生は、私を知らない先生なんだ。

目の前が真っ暗になる。


「目覚めてすぐだから、まだ何とも言えないんですが。最近の記憶はなくて古い記憶だけあるかもしれないです」

「エリンがポルトガルゴをツカってたのは4サイのトキ、3ネンカンくらいだね」


お父様は4歳からの3年間、とは言わなかった。4歳のある日タイムトラベルで3年もの時間を向こうで過ごしてきた。帰ってきた時、7歳のエリン先生ではなかった。4歳のままだった。

ドクターたちの手前、ハッキリとは言わなかった。


4歳のエリン先生は、ろくに日本語を知らず、英語も片言だったという。


「どちらにせよ、本人に現状を無理に理解させようとはしないで、話を合わせてあげてください。脳が受けたダメージが回復するまではいたずらに不安を煽ってはいけないので」


とりあえず検査をしようと、ドクターに促され、通訳のためにお父様と行ってしまった。ただの一度も私を見ないまま。

何を言ってるかまるでわからない異国の言葉と、感情の読み取れない冷たい声。無表情。眼差し。どれも私の知らないエリン先生だった。


病室に取り残された私は、無人になったベッドのシーツを婦長と無言で取り替え、途中から涙で何も見えなくなった。


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