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山猫と狼
第11章 ロイ殿下の輿入れ
ミサが終わると、紅玉の間で盛大な宴会が行われた。


「お姉ちゃん!」


ロイが広間に姿を現すと、一目散にリュリがやって来た。


「久しぶり、元気?まさかお姉ちゃんが結婚するなんて、夢にも思わなかった!」


「リュリ、大丈夫だったか」


声色を落とし心配そうな面持ちになるロイに、リュリは怪訝そうな顔をする。


「どうしたの、お姉ちゃん?何かあったの?」


「・・・・いや、何でもない。父君は国か」


「うん。強いお姉ちゃんがアレクシアにいないから、フロルを離れるのは不安なんだって。だからクリストと二人で行っておいでって」


「そうか・・・」


「それにしても、ウルリケの王様も不思議なことをするわね。


うちの国を攻めてきたと思ったら、いきなりお姉ちゃんと結婚するだなんて。


結婚で領土を増やすことを狙っているのかしら」


「おおかたそんなところだろう」


ロイは嘘をついた。クロードが戦を仕掛けた変態的な理由を話せば、リュリは心配になるだろう。


「でも、どうしてお姉ちゃんは結婚を承諾したの?あんなに嫌がっていたのに。やっぱり、クロード陛下がハンサムで素敵な方だから?」


「バカだな、そんな訳ないだろう。


戦争をすれば国は疲弊する。私が我慢すれば丸く収まると思ったからだ。結婚は妥協策に過ぎない」


「お姉ちゃん・・・!お姉ちゃんはやっぱりすごいな。


いつも自分のことよりも国のことを考えてる。


でも、国のためにお姉ちゃんと離れ離れにならないといけないのは、やっぱり辛いな」


リュリは目に涙を浮かべている。


「お姉ちゃん、私のこと忘れないでね・・・!」


リュリはロイの首にしがみつき、嗚咽を漏らした。


「ばかだな、忘れるわけないだろう・・・」


ロイの目にも涙が光る。


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