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暁の星と月
第3章 暁の天の河
…こんなに暁は礼也にべったりだったのだろうか…。
昼食後、居間に場所を移して礼也と大紋はワイン、暁はレモネードを飲みながら談笑するときも、彼は礼也から離れようとしなかった。

…こんな笑顔を見たことがない…。
大紋が茫然とするほどに、暁は礼也に蕩けるような笑顔を見せていた。
礼也を見つめ、笑う暁はきらきら輝いていた。
それは口惜しいが恋する者の瞳であった。
暁は礼也からアメリカ出張の話や、礼也の父の話などを楽しげに聴き、熱心に相槌を打っていた。
正統派美男子の礼也と繊細な美少年の暁との仲睦まじいその並びの姿は一枚の絵のようだ。
礼也もまた、弟に対する眼差しにしてはやや過剰なほど甘く暁を見つめていた。

…礼也は勿論、血を分けた兄弟として暁を可愛がっている。
…だが、暁の類いまれなる美しさに惹かれ、無意識に愛でる気持ちはそれに勝るとも劣らないものなのではないか。
礼也は美しいものが大好きだ。
美しい絵画、美しい屋敷、美しい温室、美しい衣服
…そして美しき想い人、北白川梨央…
暁も例外ではない。
その美しさと初々しさ、儚げな佇まい…それらを含めて愛しているのだ。
無論、その中に恋愛感情は皆無であろう。
暁に欲情を覚えてもいないだろう。
ただ、単純な兄弟愛に収まらない濃い情愛を感じとり、大紋は焦れるのだ。

「暁はどう?春馬との生活は楽しい?」
まるで可愛い恋人に尋ねるように暁を見つめる。
「…はい。とても楽しいです。春馬さんは優しくて…とても親切にして下さいます」
暁はちらりと大紋を見上げる。
大紋はさすがに礼也に対してばつが悪く、ぎこちなく笑う。
「…暁がいい子だからさ。…暁は綺麗で賢くで可愛くて…僕にも暁みたいな弟がいたらな…と思ったよ」
これは嘘ではない。
大紋は本当は暁の兄になりたかった。
兄になり、礼也のように幼い暁の窮地を救い、絶対的に、盲目的に愛されたかったのだ。
大紋の言葉の温度に反応したのか、礼也が冗談混じりに…だが意外なほど真剣な口調で言う。
「暁はやらないぞ。私の可愛い弟だ」
礼也の大きな手で肩を抱かれ、暁は恥ずかしそうだが幸せそうに微笑んだ。
大紋の胸はちりりと焦げるように痛む。
…そんな顔をしないでくれ。僕以外の男を切な気に見ないでくれ…。
だから、こんな風に意地悪をしてしまう。
「…それはそうと…梨央さんはお元気なのかな?」





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