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暁の星と月
第3章 暁の天の河
今まで、蜂蜜のように甘やかな眼差しで兄を見ていた暁の表情が一変した。
自分の甘えた貌を反省するかのように、ふっと寂し気な…ただ人形のように整っただけの貌になり、ソファの位置も少し礼也と離れて座り直した。

礼也はそんな弟の様子には気付かずに、端正な美貌をほころばせる。
「お元気そうだよ。…もう14歳だ。随分、大きくなられた。…そして大変にお美しい。まるで初夏に咲き初めた薔薇のような清らかさだ」
礼也は彼女が7歳の時から後見人を務めている北白川梨央のことになると、両手放しで大絶賛する。
余り女性を表立っては賞賛しない礼也だが、梨央は特別らしい。
…梨央さんにお眼にかかったあの日から…私は彼女の虜なのさ。
嘗て少し酔った時に、苦笑交じりに大紋に告白したことがあった。
惚気る礼也は極めて稀だ。
大層驚いた記憶がある。

一度だけ、梨央がまだ幼い時に礼也の屋敷でその姿を見たことがあるが、確かに梨央は何もかも備えた完璧な青年貴族の礼也が憧れ、恋するに足る驚くほど美貌の少女であった。
…絹糸のように艶やかな黒髪、ミルクのように白い肌、睫毛は濃く長く、黒目勝ちで切れ長な瞳は人形のようであった。すんなりと繊細な彫刻刀で刻んだような鼻筋、形のよい唇はまさに薔薇の花のように艶やかだった。

身体が弱く幼い頃から学校には通わず、麻布の広大で豪奢な屋敷で父、北白川伯爵に溺愛され、多くの使用人に傅かれ、大切に育てられている深窓の令嬢…。
それが梨央であった。
人見知りが激しく、自分が心許した相手にしか話そうとはしない梨央だが、礼也にはその花のような美しい貌を和ませ、笑っていた。
まだ幼い梨央だが、あと数年もしたらこの世の男性なら誰もが憧れるであろう青年貴族の礼也と並んでも違和感のない年相応の美しいカップルのように見えるに違いない。
…礼也がその日を待ちわびていることは明らかだった。

大紋はまるで当然のことを口にするかのようにさり気なく切り出した。
「それは何よりだ。…で、礼也はいつ梨央さんにプロポーズするつもりなんだ?」

傍らの暁の白い麻のシャツの肩が僅かに震えた。
礼也は暁の前では殆ど、梨央との将来の話を口にはしない。
周りでまことしやかに話されていることを否定も肯定もしない。
それは若き男爵、縣礼也は後見人を務めている北白川伯爵令嬢の梨央様といずれご結婚されるのだという噂だ。


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