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暁の星と月
第3章 暁の天の河
礼也は穏やかに口を開いた。
「…梨央さんはまだ14歳だ。…そうだ、暁を引き取った年と同じだな」
あの頃の暁を思い浮かべるように、少年を見る。
暁は切な気に微笑む。
「まだまだ結婚の話など早い」
大紋は引き下がらなかった。
今、ここで礼也の口から梨央に対する真の想いを引き出したかったのだ。
それを聞くことで、暁に本当の意味で礼也への片恋の決別をして欲しかったのだ。
「…貴族の令嬢のご結婚は早いだろう?14、5歳でご婚約などよく聞く話だ」
暁は益々俯き、白い手をぎゅっと握りしめる。
「それともお前は梨央さんと結婚する意思はないのか?ただの後見人で構わないのか?」
矢継ぎ早に繰り出される大紋の質問に、礼也は嫌な顔ひとつせずに、答える。
「…いや、私が生涯の伴侶としたい女性は、梨央さんただおひとりだ。それはもう揺るぎがない」
暁の長く濃い睫毛が震える。
大紋は胸がきりきりと痛むのを感じた。
…暁に嫌な思いをさせたいわけではない。
心の中で詫びる。

「春馬、私は梨央さん自ら私を選んでほしいのだよ。…梨央さんはまだ若すぎるほど若い。彼女がもっと成長した暁に、私を自分の意思で選んでほしいのだ。
今から外堀を埋めるような真似はしたくない」
紳士で、誠実な礼也らしい言葉だ。
「…では、もし梨央さんがお前を選ばなかったら…?」
大紋の問いかけに礼也が答えるより速く暁が口を開いた。
「…兄さんを選ばないひとがいるはずがない…」
礼也と大紋は目を見張り、暁を見る。
「…兄さんは、誰よりも美しくて賢くて優しくて強くて…最高の男性です。…兄さんを好きにならないひとがいるはずがないです…」
小さな…しかし確固たる意思を感じさせる声だった。
決して本人には届かない…礼也への切ない愛の告白のような言葉を聞き、大紋は密かに唇を噛みしめる。
礼也は嬉しそうに相好を崩し、大袈裟に暁を抱きしめる。
「ありがとう、暁。さすがは私の弟だ。お前は優しいな」
冗談めいた礼也の言葉に、暁は首を振る。
「…本当にそう思っています。…梨央さんもお年頃になられたら、必ず兄さんを選ばれます。…僕はお二人のお幸せを祈っています」
礼也は思わず暁を抱きしめる。
「…ありがとう、暁。…もしその日が来たら…またその言葉を聞かせてくれ」
「…はい、兄さん…」
礼也の広い背中越しに暁と目が合う。
暁は仄かに哀しげに笑ってみせた。

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