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暁の星と月
第1章 暗闇の中の光
案内された浴室は広々としていて真っ白でどこもかしこも清潔だった。
…しかし、暁は初めて見るバスタブや洗面所、足元の綺麗なタイルなどに驚き、暫し立ち竦んだ。
そんな暁に、生田は穏やかに尋ねる。
「…ご入浴はお一人でお出来になれますか?」
暁は慌てて頷く。
「は、はい!もちろんです…」
生田は藤の籠に入っているふかふかのタオルや上質そうな着替えを説明する。
「こちらのお着替えは礼也様がお小さい頃に着ていらしたお洋服です。急でしたので、新品が間に合わず申し訳ありません」
暁は首を振る。
「いいえ!…あの…兄さんの服…嬉しいです…!」
生田は優しく笑った。
そして浴室内の説明やシャワーやバスタブの使い方などを丁寧に教えてくれると
「…では、ご入浴が終わられた頃にお迎えにまいります。
ごゆっくりとお入りください」
と、折り目正しいお辞儀をすると、脱衣所を後にした。

浴室に一人になった暁はおずおずとバスタブに近づく。
細長い陶器のバスタブには清潔な湯がたっぷりと入っていて、しかも良い薫りがした。
それは湯に入っている入浴剤によるものなのだが、暁に知る由はない。
棚には薫り高い菫色の石鹸、黄金色の香油などが備えられている。
広く天井の高い浴室はまるで聖堂のようだ。
夢のような良い薫りがする暖かい湯気の中、暁はぼうっとしてしまう。
…こんなお風呂、初めて見た…。
今まで暁は、風呂はお金がある時に銭湯に行けるのがせいぜいだった。
最近は井戸水を汲んで身体を洗っていた。

暁は古びた絣の着物を脱ぎ、こわごわとバスタブに脚を入れた。
暖かく柔らかい適温の湯が暁の身体を優しく包み込む。
暁はふうっと息を吐く。

…こんなに気持ちがいいお風呂は生まれて初めて入った…。
身体の隅々まで湯の暖かさが伝わり、暁は身体の芯から疲れと緊張が解けてゆくのが感じられた。
…こんなに…贅沢していいのかな…。
暁はつい不安になってしまう。
そして…
…母さんにも…こんなお風呂に入れてあげたかったな…。
暁が幸せになれるよう遺言を残し、暁の涙を拭い、詫びながら亡くなった母…。
愚かだが優しかった母…。
暁を愛してくれた母…。
透明な湯の表面にひとつぶの涙が落ち、静かに波紋を作っていった。

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