この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
暁の星と月
第4章 夜啼鳥の夢
「…二十歳か…。早いものだな…」
礼也は、雪子の手を取り優しくエスコートしながら優雅にワルツを踊る暁を見つめる。
「…お前が暁を引き取って六年か…」
大紋も踊る二人を見つめる。
暁は背もすらりと伸び、手足も長く西洋人のようなスタイルに成長していた。
…十四の時は、身体も小柄で痩せっぽちで、年より幼く頼りなげだったのに…。
今では、気品溢れる洗練された貴公子そのものだ。
礼也仕込みのダンスもすっかり板についた。
雪子はスタイルも良く、ダンスも巧みなので踊る二人はとても絵になり、周りからは羨望の溜息が出る。
「…暁はお前の最高傑作だよ。…本当に美しく成長した…」
熱心に両手離しで誉めそやす大紋に、礼也は首を振る。
「いや、私は暁の成長を助けただけだ。本人が血が滲むような努力をした成果さ。…暁は本当に素直な良い子だ…私の宝物だよ…」
感無量といった礼也の言葉に、大紋は胸を突かれる。
礼也の雄々しく端正な横顔には暁への愛情が満ち溢れていた。
踊り続ける暁を見守りながら、礼也は昔を思い出すように呟く。
「…皆はよく、私が腹違いの暁を可愛がるのを偉いと褒めるが…それは違うんだ。…私はあの日、やくざ者に拉致されそうになっていた暁の顔を見た途端、この子は私が守ると決意したんだ。…暁の顔は絶望感に満ちていて…胸が痛くなるほど怯えていた…。私はこの子の笑顔を見る為ならなんでもしようと思った。…腹違いだとか愛人の子供だとか…そんなことはどうでも良かった…。ただただ、暁が愛しかったんだ…」
大紋は、その言葉に衝撃を受ける。
礼也の暁への愛情の深さに今更ながら驚かされたのだ。
…こんなにも深く愛を注がれたら、暁が礼也を愛してしまうのは無理はないのかもしれない…。
しかし大紋の胸は礼也への嫉妬で満ち溢れる。
「…羨ましいよ、礼也。…僕もその日の暁を助け出したかった」
礼也は不思議そうに眉を上げ、温かく笑った。
「…お前は私と同じくらいに暁を大切に思ってくれているな。…ありがとう、心強いよ。これからも暁の力になってやってくれ」
「… ああ…」
大紋は礼也の邪心のない言葉を聞き、胸が痛んだ。
…僕は、こんなにも自分を信頼してくれている親友を裏切り、親友の最愛の弟を恋人にしている…
あの美しい身体を蹂躙している…
そして、尚も荊棘の道を歩かせようとしている…
…これは許されざることではないのか…
礼也は、雪子の手を取り優しくエスコートしながら優雅にワルツを踊る暁を見つめる。
「…お前が暁を引き取って六年か…」
大紋も踊る二人を見つめる。
暁は背もすらりと伸び、手足も長く西洋人のようなスタイルに成長していた。
…十四の時は、身体も小柄で痩せっぽちで、年より幼く頼りなげだったのに…。
今では、気品溢れる洗練された貴公子そのものだ。
礼也仕込みのダンスもすっかり板についた。
雪子はスタイルも良く、ダンスも巧みなので踊る二人はとても絵になり、周りからは羨望の溜息が出る。
「…暁はお前の最高傑作だよ。…本当に美しく成長した…」
熱心に両手離しで誉めそやす大紋に、礼也は首を振る。
「いや、私は暁の成長を助けただけだ。本人が血が滲むような努力をした成果さ。…暁は本当に素直な良い子だ…私の宝物だよ…」
感無量といった礼也の言葉に、大紋は胸を突かれる。
礼也の雄々しく端正な横顔には暁への愛情が満ち溢れていた。
踊り続ける暁を見守りながら、礼也は昔を思い出すように呟く。
「…皆はよく、私が腹違いの暁を可愛がるのを偉いと褒めるが…それは違うんだ。…私はあの日、やくざ者に拉致されそうになっていた暁の顔を見た途端、この子は私が守ると決意したんだ。…暁の顔は絶望感に満ちていて…胸が痛くなるほど怯えていた…。私はこの子の笑顔を見る為ならなんでもしようと思った。…腹違いだとか愛人の子供だとか…そんなことはどうでも良かった…。ただただ、暁が愛しかったんだ…」
大紋は、その言葉に衝撃を受ける。
礼也の暁への愛情の深さに今更ながら驚かされたのだ。
…こんなにも深く愛を注がれたら、暁が礼也を愛してしまうのは無理はないのかもしれない…。
しかし大紋の胸は礼也への嫉妬で満ち溢れる。
「…羨ましいよ、礼也。…僕もその日の暁を助け出したかった」
礼也は不思議そうに眉を上げ、温かく笑った。
「…お前は私と同じくらいに暁を大切に思ってくれているな。…ありがとう、心強いよ。これからも暁の力になってやってくれ」
「… ああ…」
大紋は礼也の邪心のない言葉を聞き、胸が痛んだ。
…僕は、こんなにも自分を信頼してくれている親友を裏切り、親友の最愛の弟を恋人にしている…
あの美しい身体を蹂躙している…
そして、尚も荊棘の道を歩かせようとしている…
…これは許されざることではないのか…