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暁の星と月
第4章 夜啼鳥の夢
暁は優しく雪子を見つめながら、ワルツを踊る。
玻璃のように繊細で美しいその貌に柔らかな微笑みを浮かべながら…。
その暁を見つめる雪子の瞳は明らかに恋する乙女のそれだ。
恋をしていることを全身で表している雪子は側から見ても大変に初々しく微笑ましかった。
礼也は、そっと囁く。
「…雪子さんは暁が好きなんだろう?」
「…そうかな…」
「そうに決まっているさ。あの表情を見れば判る。…雪子さんは美しく賢く進歩的な素晴らしいお嬢さんだ」
得意な語学を生かし、将来は通訳の仕事をしたいと上智大学に通う雪子を礼也はとても気に入っていた。
大紋の妹の雪子を昔から知っている親しみもある。
「…二人はお似合いだと思わないか?美男美女だし…大人しい暁には雪子さんくらいしっかりした女性の方が良いかもしれないな」
「…雪子は良くても、暁がどう思っているか判らないだろう」
大紋はやや苦しげに素っ気なく答える。
「…そうだな…」
礼也は少し困った顔をした。
「暁は何でも話してくれるのに、恋愛についてだけは全く話してくれないんだ。…好きな人はいるようなんだが…水を向けても曖昧に笑うだけでね」
飲みかけたワインを噎せそうになり、大紋は咳払いをする。
「…好きな人…?」
「ああ。…どうやらいるらしい。週末になると楽しそうに出掛けるし、たまに外泊することもある。…厩舎に泊まり込んでいるというが…まあ嘘だろうな。…帰って来た時に厩や馬の匂いが一切しないから」
「…へ、へえ…」
…心臓に悪いな…と、大紋はハラハラする。
礼也は寂しげに呟く。
「…別に暁が真剣な交際をしているならいいんだ。…例えその相手と身分違いでも、良い人なら私は喜んで交際を認めるのに…。…なぜ暁は私に何も話してはくれないのだろう…」
大紋は苦しげに答える。
「…じ、事情があるのかも知れないな…」
「…不倫か?」
「さ、さあ…」
「…そんな不毛な関係なら早く断ち切るべきだ。…暁にはもっと純粋無垢なお嬢さんがふさわしい」
「…お、おい…何もまだ不倫と決まった訳じゃ…」
礼也は珍しく苛立ったように眉を顰める。
「…身分違いでも構わない。だが、不倫は駄目だ。道ならぬ恋は暁が辛い思いをするだけだからな。…もしそうなら私は断固として反対する」
大紋は、礼也の顔を見ながら小さく溜息を吐いた。
…もし事実を知ったら…僕はきっと決闘を申し込まれるな…。
玻璃のように繊細で美しいその貌に柔らかな微笑みを浮かべながら…。
その暁を見つめる雪子の瞳は明らかに恋する乙女のそれだ。
恋をしていることを全身で表している雪子は側から見ても大変に初々しく微笑ましかった。
礼也は、そっと囁く。
「…雪子さんは暁が好きなんだろう?」
「…そうかな…」
「そうに決まっているさ。あの表情を見れば判る。…雪子さんは美しく賢く進歩的な素晴らしいお嬢さんだ」
得意な語学を生かし、将来は通訳の仕事をしたいと上智大学に通う雪子を礼也はとても気に入っていた。
大紋の妹の雪子を昔から知っている親しみもある。
「…二人はお似合いだと思わないか?美男美女だし…大人しい暁には雪子さんくらいしっかりした女性の方が良いかもしれないな」
「…雪子は良くても、暁がどう思っているか判らないだろう」
大紋はやや苦しげに素っ気なく答える。
「…そうだな…」
礼也は少し困った顔をした。
「暁は何でも話してくれるのに、恋愛についてだけは全く話してくれないんだ。…好きな人はいるようなんだが…水を向けても曖昧に笑うだけでね」
飲みかけたワインを噎せそうになり、大紋は咳払いをする。
「…好きな人…?」
「ああ。…どうやらいるらしい。週末になると楽しそうに出掛けるし、たまに外泊することもある。…厩舎に泊まり込んでいるというが…まあ嘘だろうな。…帰って来た時に厩や馬の匂いが一切しないから」
「…へ、へえ…」
…心臓に悪いな…と、大紋はハラハラする。
礼也は寂しげに呟く。
「…別に暁が真剣な交際をしているならいいんだ。…例えその相手と身分違いでも、良い人なら私は喜んで交際を認めるのに…。…なぜ暁は私に何も話してはくれないのだろう…」
大紋は苦しげに答える。
「…じ、事情があるのかも知れないな…」
「…不倫か?」
「さ、さあ…」
「…そんな不毛な関係なら早く断ち切るべきだ。…暁にはもっと純粋無垢なお嬢さんがふさわしい」
「…お、おい…何もまだ不倫と決まった訳じゃ…」
礼也は珍しく苛立ったように眉を顰める。
「…身分違いでも構わない。だが、不倫は駄目だ。道ならぬ恋は暁が辛い思いをするだけだからな。…もしそうなら私は断固として反対する」
大紋は、礼也の顔を見ながら小さく溜息を吐いた。
…もし事実を知ったら…僕はきっと決闘を申し込まれるな…。