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暁の星と月
第1章 暗闇の中の光
礼也は暁の手を握り、部屋を案内する。
「ここはかつての私の子供部屋なんだ。ベッドも、テーブルもソファもクローゼットもそのまま…おっと、これはさすがに暁はもう使わないな」
礼也は笑いながら、白くペイントされた木馬を指差す。
暁はそれが何をするものか分からなかった。
暁はおもちゃの類いのものを持っていなかったし、遊んだこともなかったからだ。
不思議そうな顔をする暁を、礼也はすぐに全てを察して慈しみ深く抱き寄せた。
「…新しい家具を買おう。暁が好きなもので揃えよう。なんでも希望を言いなさい」
暁は慌てて首を振る。
「このままがいいです…僕は兄さんが使った家具がいいです!」
「しかし…」
「お願いです。兄さんのものをそのまま使わせてください!」
一生懸命懇願する暁に礼也は最後は根負けし、笑って頷いた。

暁は部屋を見渡した。
礼也は古い家具のままですまないと言うけれど、暁には外国の王子様の部屋にしか見えない。
…広々とした大きな寝台、真っ白なシーツが掛かり、ふわふわの羽根枕やクッションが並んでいる。
洒落た机は胡桃色で、一人用とは思えないほど大きい。
ソファは紅い革張りでいかにも座り心地が良さそうだ。
クローゼットは広く…暁は最初、何の部屋なのかと思ったほどだった。
本棚には外国の絵本や児童文学書がびっしりと並べられている。
古い本らしいそれらは重厚な装丁で、本好きな暁は背表紙を見ただけでわくわくした。
本なんて、ここ1、2年は紐解いたことがなかったからだ。
本を見て目を輝かせた暁に、礼也は話しかける。
「…本が好き?」
「はい、大好きです。…学校に通えていた時は毎日、図書室で本を読むのが一番の楽しみでした」
本を読んでいる時だけは、辛い現実を忘れられたからだ。
「東翼の一階に図書室があるんだ。…そこの本も好きなだけ読みなさい。明日にでも案内しよう」
感激で胸が一杯になった暁に礼也は優しく髪を撫でる。
「…暁はいい子だな…お前みたいないい子が弟で、私は嬉しいよ」
「…兄さん…」
…あんまり優しい言葉ばかり掛けないでほしい。
嬉しいのは自分だ。嬉しくて嬉しくてまた涙が出そうになる。
でも、泣いたらまた兄さんを困らせる…
暁は唇をぎゅっと結んで泣くのを我慢する。
しかし礼也は
「…泣きたい時は泣きなさい。我慢してはだめだ」
と静かに言った。
だから結局、暁は泣いてしまうのだ。
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