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暁の星と月
第1章 暗闇の中の光

気持ちが落ち着くと暁は、一番気懸りだったことを尋ねてみる。
「…あの…縣男爵様と奥様はこのお屋敷にいらっしゃるのですか?」
礼也は、ああと頷き、暁が理解し易いように語り始めた。
「父は今、日本にいないんだ。アメリカのボストンで暮らしている。仕事もあるけれど…どうやらあちらに好い人がいるらしくてね」
苦笑してみせ、悪戯っぽく目配せをした。
「…だからもしかしたら僕たちには青い目の兄弟がいるかも知れないよ」
「…は、はあ…」
礼也の父、縣男爵は艶福家だ。
また、窮屈な日本より自由な海外が好きで、一年の大半は海外暮らしだ。
父にどうやら愛人と呼ばれる人がたくさんいるらしいと言うことに薄々勘付いたのは礼也がまだ幼い時だった。
父はおおらかで明るい性格で、礼也のことは可愛がってくれていた。
だが大銀行の頭取の娘で、プライドが高い妻…礼也の母とは昔から上手く行っていなかった。
ゆえに長年の別居暮らしが続いていた。
そして…
「母もこの家にはいない。実家に近い鎌倉に父に家を建ててもらってそこで自由気ままに暮らしている。…だから…」
暁を見て改めて詫びる。
「…まさか暁にあんなことをするなんて思ってもみなかったんだ。…本当に、すまなかったね」
暁は慌てる。
「そんな…!兄さんが謝ることではないです。…それに…母がしたことは良いことではないから…僕たちが責められても仕方ないことです…」
「いや、だからと言って小さな子供にそんな仕打ちをするなんて許されることではない」
礼也はきっぱりと言い放つ。
そして、暁を安心させるように笑いかける。
「…でももう心配いらないからね。暁は私が守る。
…明日、父に電話して経緯を話すよ。あの指輪が何よりの証拠だし…まあ、父はあっさり認めるだろうけれどね。身に覚えがありすぎて」
と笑う。
「…母にも会いに行ってくる」
「…兄さん…」
「もう二度とこんなことをしないようにしっかりと釘を刺して来るよ」
暁が遠慮勝ちに口を開く。
「…あの…奥様を責めないで差し上げてください…」
「…暁…」
「奥様は正妻なのですからお怒りになって当然です。…僕は…兄さんに助けられてこちらに住まわせて貰えて…もう充分に幸せなんです…」
健気な弟の言葉を聞き、礼也は思わず暁を抱きしめる。
「暁は本当にいい子だね…」
暁は再び、大きな安堵感と甘いときめきに包まれるのだった。
「…あの…縣男爵様と奥様はこのお屋敷にいらっしゃるのですか?」
礼也は、ああと頷き、暁が理解し易いように語り始めた。
「父は今、日本にいないんだ。アメリカのボストンで暮らしている。仕事もあるけれど…どうやらあちらに好い人がいるらしくてね」
苦笑してみせ、悪戯っぽく目配せをした。
「…だからもしかしたら僕たちには青い目の兄弟がいるかも知れないよ」
「…は、はあ…」
礼也の父、縣男爵は艶福家だ。
また、窮屈な日本より自由な海外が好きで、一年の大半は海外暮らしだ。
父にどうやら愛人と呼ばれる人がたくさんいるらしいと言うことに薄々勘付いたのは礼也がまだ幼い時だった。
父はおおらかで明るい性格で、礼也のことは可愛がってくれていた。
だが大銀行の頭取の娘で、プライドが高い妻…礼也の母とは昔から上手く行っていなかった。
ゆえに長年の別居暮らしが続いていた。
そして…
「母もこの家にはいない。実家に近い鎌倉に父に家を建ててもらってそこで自由気ままに暮らしている。…だから…」
暁を見て改めて詫びる。
「…まさか暁にあんなことをするなんて思ってもみなかったんだ。…本当に、すまなかったね」
暁は慌てる。
「そんな…!兄さんが謝ることではないです。…それに…母がしたことは良いことではないから…僕たちが責められても仕方ないことです…」
「いや、だからと言って小さな子供にそんな仕打ちをするなんて許されることではない」
礼也はきっぱりと言い放つ。
そして、暁を安心させるように笑いかける。
「…でももう心配いらないからね。暁は私が守る。
…明日、父に電話して経緯を話すよ。あの指輪が何よりの証拠だし…まあ、父はあっさり認めるだろうけれどね。身に覚えがありすぎて」
と笑う。
「…母にも会いに行ってくる」
「…兄さん…」
「もう二度とこんなことをしないようにしっかりと釘を刺して来るよ」
暁が遠慮勝ちに口を開く。
「…あの…奥様を責めないで差し上げてください…」
「…暁…」
「奥様は正妻なのですからお怒りになって当然です。…僕は…兄さんに助けられてこちらに住まわせて貰えて…もう充分に幸せなんです…」
健気な弟の言葉を聞き、礼也は思わず暁を抱きしめる。
「暁は本当にいい子だね…」
暁は再び、大きな安堵感と甘いときめきに包まれるのだった。

