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暁の星と月
第4章 夜啼鳥の夢
「…すみません。…雪子さん…」
暁はその美しい彫像のような貌に憂いを浮かべて、謝る。
「…謝らないで。…私、諦めないから」
雪子は毅然として貌を上げる。
「…雪子さん…」
「…諦めないでずっと貴方を好きでいるわ。…だって14歳の時に貴方に会ってから、ずっと貴方だけを見て来たんですもの…」
…雪子が暁に初めて会ったのは、兄に連れられて訪問した縣邸でだった。
暁はまだようやく屋敷に慣れたばかりの頃で、その驚くほど透明感を湛えた美しい貌には初めて会う雪子に、畏怖のような戸惑いのような表情を浮かべ、だがすぐに優し気な笑みで挨拶をした。
「…初めまして。雪子さん。…あの…僕はまだまだ色々と分からないことだらけなので…どうぞよろしくお願いします…」
その頼りなげな寂しげな貌に雪子は少女ながら母性本能めいたものを刺激されたのだ。
…この美しい少年を守ってあげたい…!
その欲望はやがて年追うごとに、恋に変わった。
…この美しい青年を知りたい。
暁は話しても話してもどこか謎に包まれている存在だった。
もっともっと彼を知りたい。
そして…この美しい青年に愛されたい。
このいつも遠くばかり見て、捉え所のない青年が見つめる先の人間でありたい。
暁は雪子にとって、常に優しく王子様のように接してくれるのに、心は決して見せてはくれない近くて遠い存在だった。
手に触れられそうで触れられない美しい夢の青年のような暁…。
暁を見るといつももどかしさと切なさと恋しさを同時に感じさせられる。
いつか、私に貴方の体温を感じさせて…。
貴方の一番側にいかせて…。
踊りながら、雪子の理知的な強い眼差しから熱い思いが伝わる。
…春馬さんに良く似た熱い眼差し…。
暁は大紋を彷彿とさせる雪子の瞳を、苦しい恋の罪の意識からまともに見ることが出来なかった。
ふと上げた視線の先に、夢見るような表情で大紋を一途に見つめる絢子の姿があった。
…ヨハン・シュトラウスの美しき青きドナウ…
暁が夜の温室で大紋と初めて踊った曲だ…。
想い出深いこの曲を、何も知らずに無邪気に踊る絢子を、暁は静かに妬んだ。
…ワルツは終盤にかかっていた…。
暁はその美しい彫像のような貌に憂いを浮かべて、謝る。
「…謝らないで。…私、諦めないから」
雪子は毅然として貌を上げる。
「…雪子さん…」
「…諦めないでずっと貴方を好きでいるわ。…だって14歳の時に貴方に会ってから、ずっと貴方だけを見て来たんですもの…」
…雪子が暁に初めて会ったのは、兄に連れられて訪問した縣邸でだった。
暁はまだようやく屋敷に慣れたばかりの頃で、その驚くほど透明感を湛えた美しい貌には初めて会う雪子に、畏怖のような戸惑いのような表情を浮かべ、だがすぐに優し気な笑みで挨拶をした。
「…初めまして。雪子さん。…あの…僕はまだまだ色々と分からないことだらけなので…どうぞよろしくお願いします…」
その頼りなげな寂しげな貌に雪子は少女ながら母性本能めいたものを刺激されたのだ。
…この美しい少年を守ってあげたい…!
その欲望はやがて年追うごとに、恋に変わった。
…この美しい青年を知りたい。
暁は話しても話してもどこか謎に包まれている存在だった。
もっともっと彼を知りたい。
そして…この美しい青年に愛されたい。
このいつも遠くばかり見て、捉え所のない青年が見つめる先の人間でありたい。
暁は雪子にとって、常に優しく王子様のように接してくれるのに、心は決して見せてはくれない近くて遠い存在だった。
手に触れられそうで触れられない美しい夢の青年のような暁…。
暁を見るといつももどかしさと切なさと恋しさを同時に感じさせられる。
いつか、私に貴方の体温を感じさせて…。
貴方の一番側にいかせて…。
踊りながら、雪子の理知的な強い眼差しから熱い思いが伝わる。
…春馬さんに良く似た熱い眼差し…。
暁は大紋を彷彿とさせる雪子の瞳を、苦しい恋の罪の意識からまともに見ることが出来なかった。
ふと上げた視線の先に、夢見るような表情で大紋を一途に見つめる絢子の姿があった。
…ヨハン・シュトラウスの美しき青きドナウ…
暁が夜の温室で大紋と初めて踊った曲だ…。
想い出深いこの曲を、何も知らずに無邪気に踊る絢子を、暁は静かに妬んだ。
…ワルツは終盤にかかっていた…。