この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
暁の星と月
第4章 夜啼鳥の夢
息が詰まるほど強く抱きすくめられて、暁は思わず声を上げる。
「…苦しいですよ…」
大紋は力を緩めない。いや、尚一層力を込めて暁の華奢な身体を抱きすくめる。
「ごめん、嬉しくて…。君が初めて僕に嫉妬してくれたから…。嬉しくて堪らない」
「…馬鹿…」
暁は大紋の逞しい腕にそっと触れる。
「…あのワルツ…」
「うん?」
「…春馬さんが僕に初めて教えてくれた曲…あの夜の温室で…」
「…美しき青きドナウか…。そうだったね、懐かしいな…」
…初めて暁を抱きしめて、初めて愛の告白をした…。
彼はまだ14歳だった。
無垢な白い花のような美しく儚げな少年だった。
…禁断とは知りつつも手を触れずにはいられないような…
「…大好きな曲なのに…あの曲を僕は春馬さんと夜会で踊ることは出来ないんだ…と思ったら…あのお嬢さんが羨ましくて妬ましくて…」
「…暁…!」
暁を抱擁する腕の力は緩まない。
更に強く抱きしめられて、思わず暁は大紋を振り返る。
「…今日はどうしたの?…そんなこと…まるで…愛の告白だ…」
感に耐えたような男の声に、暁は拗ねたように貌を背ける。
「…僕はそんなに冷たいですか?…もうずっと貴方が好きなのに…」
大紋の大きな手が、暁の顎を優しく捉える。
「もう一度、言ってくれ…」
「…え?」
男の理知的な瞳の中には熱く滾るような情熱が見える。
暁の胸の中はじんわりと幸せで満たされる。
「…ずっと好きですよ。…春馬さん。…気づいていなかったんですか?」
「…うん。僕は君を好きすぎて、君への愛を語るのに夢中すぎたのかもしれないな」
照れたように笑う大紋の高い鼻をつっつく。
「…本末転倒です」
「本当だね。…ここは寒いな。暁が風邪をひくといけない。…おいで…」
強く手を引かれ、居間に入る。
外観は日本家屋だが、中は和洋折衷の洒落たモダンな家だ。
居間には暖かく燃える暖炉や、舶来の家具がある洋室だった。
大紋は、壁際に設置した蓄音機に、淀みない動作で1枚のレコードをセットすると、針を落とす。
そして部屋の中央まで暁を導くと、優しく手を取り、キスをした。
「…踊ろう、美しき青きドナウだ…」
「…え?」
…蓄音機から流れて来たのは、紛れもなくあのヨハン・シュトラウスだ。
「…君といつか踊りたいな…と用意していたんだ」
「…春馬さん…」
…熱いものが込み上げて、それ以上言葉にならない。
「…苦しいですよ…」
大紋は力を緩めない。いや、尚一層力を込めて暁の華奢な身体を抱きすくめる。
「ごめん、嬉しくて…。君が初めて僕に嫉妬してくれたから…。嬉しくて堪らない」
「…馬鹿…」
暁は大紋の逞しい腕にそっと触れる。
「…あのワルツ…」
「うん?」
「…春馬さんが僕に初めて教えてくれた曲…あの夜の温室で…」
「…美しき青きドナウか…。そうだったね、懐かしいな…」
…初めて暁を抱きしめて、初めて愛の告白をした…。
彼はまだ14歳だった。
無垢な白い花のような美しく儚げな少年だった。
…禁断とは知りつつも手を触れずにはいられないような…
「…大好きな曲なのに…あの曲を僕は春馬さんと夜会で踊ることは出来ないんだ…と思ったら…あのお嬢さんが羨ましくて妬ましくて…」
「…暁…!」
暁を抱擁する腕の力は緩まない。
更に強く抱きしめられて、思わず暁は大紋を振り返る。
「…今日はどうしたの?…そんなこと…まるで…愛の告白だ…」
感に耐えたような男の声に、暁は拗ねたように貌を背ける。
「…僕はそんなに冷たいですか?…もうずっと貴方が好きなのに…」
大紋の大きな手が、暁の顎を優しく捉える。
「もう一度、言ってくれ…」
「…え?」
男の理知的な瞳の中には熱く滾るような情熱が見える。
暁の胸の中はじんわりと幸せで満たされる。
「…ずっと好きですよ。…春馬さん。…気づいていなかったんですか?」
「…うん。僕は君を好きすぎて、君への愛を語るのに夢中すぎたのかもしれないな」
照れたように笑う大紋の高い鼻をつっつく。
「…本末転倒です」
「本当だね。…ここは寒いな。暁が風邪をひくといけない。…おいで…」
強く手を引かれ、居間に入る。
外観は日本家屋だが、中は和洋折衷の洒落たモダンな家だ。
居間には暖かく燃える暖炉や、舶来の家具がある洋室だった。
大紋は、壁際に設置した蓄音機に、淀みない動作で1枚のレコードをセットすると、針を落とす。
そして部屋の中央まで暁を導くと、優しく手を取り、キスをした。
「…踊ろう、美しき青きドナウだ…」
「…え?」
…蓄音機から流れて来たのは、紛れもなくあのヨハン・シュトラウスだ。
「…君といつか踊りたいな…と用意していたんだ」
「…春馬さん…」
…熱いものが込み上げて、それ以上言葉にならない。