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暁の星と月
第4章 夜啼鳥の夢
振り返ると、風間忍がブラックスーツに派手なシャツ姿で笑っていた。明るい褐色の髪は長くウェイブがかり、その鳶色の瞳は相変わらずきらきら輝いていた。
「…風間先輩…!」
暁は驚いて見上げる。
「久しぶりだね、縣。最近は馬術大会くらいでしか会えないから寂しいよ。…しかし、相変わらず美人だな」
そう言うと、暁を背中から抱き締めた。
大紋の貌が露骨に険しくなる。
それをちらりと確認しながら、
「…おや?…何だか珍しい組み合わせだね?…大紋先生に、雪子嬢に…ああ、西坊城子爵のお嬢様…確か絢子さんですよね?」
絢子は風間の型破りな服装や言動にたじろぎながらも、礼儀正しくお辞儀をする。
「…お久ぶりでございます…」
「どうも。…これは…何?ダブルデートってやつかな?」
やや毒を含んだ軽口に、大紋が遮るように口を開く。
「もちろん違うよ、風間くん。相変わらず元気そうで何よりだ」
雪子が無邪気に説明する。
「絢子様は私がお誘いしたの。…お兄様が余りにつれなくてお気の毒だから…。ねえ、風間様からも仰ってよ。こんなに素晴らしいお嬢様の縁談を断っておしまいになるなんて、どうかしてるって」
「雪子!」
大紋の静かだが厳しい叱責が飛ぶ。
絢子が哀しげに顔を伏せる。
暁は居た堪れずに、風間の耳元で素早く囁く。
「…お願いです。僕をここから連れ出して下さい。今すぐに…」
睫毛が触れ合いそうな距離で風間の鳶色の瞳が大きく見開かれ、優しく笑った。
そして小さく呟く。
「お安い御用だ」
風間は急に何かを思いついたように、大きな声を出した。
「そうだ!馬術部の主将が今度の大会のことで暁に連絡を取りたいと言っていたんだ。折り入って頼みがあるらしい。これから彼と飲みに行くんだが、丁度いい。縣も一緒に行かないか?大学が違うと中々会えなくて困っていたよ」
暁はぎこちなく頷く。
「…わかりました…伺います」
「暁!」
大紋が、一同が驚くほどの鋭い声を上げた。
「…何か不都合でも?大紋先生…」
風間の日本人離れした眼差しと大紋の鋭い眼差しが交差する。
暁が感情を押し殺した声で告げる。
「春馬さん、折角ですが僕はこれで失礼します。…雪子さん、今日はお誘いをありがとう。絢子さん、どうぞごゆっくりお楽しみ下さい。…では行きましょう。先輩…」
風間は暁の肩を抱きながら、優雅にお辞儀すると二人でその場を辞した。
「…風間先輩…!」
暁は驚いて見上げる。
「久しぶりだね、縣。最近は馬術大会くらいでしか会えないから寂しいよ。…しかし、相変わらず美人だな」
そう言うと、暁を背中から抱き締めた。
大紋の貌が露骨に険しくなる。
それをちらりと確認しながら、
「…おや?…何だか珍しい組み合わせだね?…大紋先生に、雪子嬢に…ああ、西坊城子爵のお嬢様…確か絢子さんですよね?」
絢子は風間の型破りな服装や言動にたじろぎながらも、礼儀正しくお辞儀をする。
「…お久ぶりでございます…」
「どうも。…これは…何?ダブルデートってやつかな?」
やや毒を含んだ軽口に、大紋が遮るように口を開く。
「もちろん違うよ、風間くん。相変わらず元気そうで何よりだ」
雪子が無邪気に説明する。
「絢子様は私がお誘いしたの。…お兄様が余りにつれなくてお気の毒だから…。ねえ、風間様からも仰ってよ。こんなに素晴らしいお嬢様の縁談を断っておしまいになるなんて、どうかしてるって」
「雪子!」
大紋の静かだが厳しい叱責が飛ぶ。
絢子が哀しげに顔を伏せる。
暁は居た堪れずに、風間の耳元で素早く囁く。
「…お願いです。僕をここから連れ出して下さい。今すぐに…」
睫毛が触れ合いそうな距離で風間の鳶色の瞳が大きく見開かれ、優しく笑った。
そして小さく呟く。
「お安い御用だ」
風間は急に何かを思いついたように、大きな声を出した。
「そうだ!馬術部の主将が今度の大会のことで暁に連絡を取りたいと言っていたんだ。折り入って頼みがあるらしい。これから彼と飲みに行くんだが、丁度いい。縣も一緒に行かないか?大学が違うと中々会えなくて困っていたよ」
暁はぎこちなく頷く。
「…わかりました…伺います」
「暁!」
大紋が、一同が驚くほどの鋭い声を上げた。
「…何か不都合でも?大紋先生…」
風間の日本人離れした眼差しと大紋の鋭い眼差しが交差する。
暁が感情を押し殺した声で告げる。
「春馬さん、折角ですが僕はこれで失礼します。…雪子さん、今日はお誘いをありがとう。絢子さん、どうぞごゆっくりお楽しみ下さい。…では行きましょう。先輩…」
風間は暁の肩を抱きながら、優雅にお辞儀すると二人でその場を辞した。