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暁の星と月
第4章 夜啼鳥の夢
最新式のルノーは風間のお気に入りらしい。
会館を出て暁を助手席に乗せると、巧みなハンドル捌きで、車を発進させる。
「親父を脅して買わせたんだ。買わないと、新しい愛人の存在をママにバラすよってね」
わざと露悪的に笑う風間に、暁は自分を和ませようとしている優しさを感じた。
「…すみません…急にこんなお願いをして…。
…あの…、先輩のお連れの方は良かったのですか?」
暁を連れ出そうとした時、風間は四十絡みの豪奢なシルバーフォックスの毛皮を羽織った妖艶美女に、手短に訳を話していた。
相手の女性は慣れているのか、風間の頬にキスをすると
「…この埋め合わせはいつかして貰うわよ?」
と艶めいた瞳で笑い、手をひらひらと振った。
「大丈夫。あっちは金満夫人だから。実業家の旦那が海外赴任中で若いツバメと羽根を伸ばしているのさ」
相変わらずの艶福家のようだが、トラブルになったという話は聞かない。
おそらくは、遊び方や別れ際が綺麗なのと、風間自身のどこか憎めない魅力的な人柄のおかげなのだろう。
「…すみません…。ご迷惑をおかけして…」
俯いて詫びる暁の膝に置かれた白い手を片手ハンドルで握りしめる。
「…なにがあったの…?」
思いがけずに真摯な優しい声に、暁は言葉に詰まった。
「…話すだけでも楽になることもあるよ」
黙りこくる暁に、わざと不満げに言い放つ。
「…大紋先生は随分、暁に冷たいんだな。暁の目の前であんな美人をはべらせてさ、無神経だ。
…よし、俺が慰めてやる。ホテルに行こう」
暁は狼狽し、慌てて首を振る。
「行きません!違います!春馬さんは悪くないんです!」
風間が吹き出す。
そして、安心させるような口調で言った。
「…嘘だよ。こんな時でも暁は大紋先生を庇うんだな。…優しい恋人だ。
… うちのホテルのバーに行こう。人目につかないし、ゆっくり話せる…。いいね?」
もう1度、優しく手を握られる。
暁は黙って頷いた。
…今はとにかく、ここから離れたい…。
一刻も早く…。
暁は静かに瞼を閉じた。
会館を出て暁を助手席に乗せると、巧みなハンドル捌きで、車を発進させる。
「親父を脅して買わせたんだ。買わないと、新しい愛人の存在をママにバラすよってね」
わざと露悪的に笑う風間に、暁は自分を和ませようとしている優しさを感じた。
「…すみません…急にこんなお願いをして…。
…あの…、先輩のお連れの方は良かったのですか?」
暁を連れ出そうとした時、風間は四十絡みの豪奢なシルバーフォックスの毛皮を羽織った妖艶美女に、手短に訳を話していた。
相手の女性は慣れているのか、風間の頬にキスをすると
「…この埋め合わせはいつかして貰うわよ?」
と艶めいた瞳で笑い、手をひらひらと振った。
「大丈夫。あっちは金満夫人だから。実業家の旦那が海外赴任中で若いツバメと羽根を伸ばしているのさ」
相変わらずの艶福家のようだが、トラブルになったという話は聞かない。
おそらくは、遊び方や別れ際が綺麗なのと、風間自身のどこか憎めない魅力的な人柄のおかげなのだろう。
「…すみません…。ご迷惑をおかけして…」
俯いて詫びる暁の膝に置かれた白い手を片手ハンドルで握りしめる。
「…なにがあったの…?」
思いがけずに真摯な優しい声に、暁は言葉に詰まった。
「…話すだけでも楽になることもあるよ」
黙りこくる暁に、わざと不満げに言い放つ。
「…大紋先生は随分、暁に冷たいんだな。暁の目の前であんな美人をはべらせてさ、無神経だ。
…よし、俺が慰めてやる。ホテルに行こう」
暁は狼狽し、慌てて首を振る。
「行きません!違います!春馬さんは悪くないんです!」
風間が吹き出す。
そして、安心させるような口調で言った。
「…嘘だよ。こんな時でも暁は大紋先生を庇うんだな。…優しい恋人だ。
… うちのホテルのバーに行こう。人目につかないし、ゆっくり話せる…。いいね?」
もう1度、優しく手を握られる。
暁は黙って頷いた。
…今はとにかく、ここから離れたい…。
一刻も早く…。
暁は静かに瞼を閉じた。