この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
暁の星と月
第4章 夜啼鳥の夢
ホテル・カザマのバー・ラウンジで、風間は物慣れたように暁に甘いカクテルと自分にはブランデーをオーダーした。
高輪の小高い丘に建つこのホテルは、新興ホテルではあるが、モダンな洒落た造りと丁寧かつ欧米を模した接客も評判であった。
ホテル王と呼ばれる風間の父親が一代で築き上げた牙城でもある。
制服姿のウェイター達は風間が現れると、二人を緊張気味に個室に案内した。
だが社長の子息の連れということで、暁に対して丁重な接客はするが、露骨に興味津々な眼差しで見たりはしないのが助かった。
落ち着いた個人の居間のような部屋のソファに座り、風間のオーダーしたカクテルを飲むと、少しだけ気分が落ち着いた。
「…なにがあったの?話してごらん」
暁の貌を覗き込むようにして見つめる風間の表情からはいつもの人を喰ったようなふざけた色は一切なかった。
暁は重い口を開く。
「…今日いらした絢子さん…」
「うん」
「…絢子さんのお父様から是非にと春馬さんに縁談があったそうなんです。絢子さんがこの間の馬術大会に出場していた春馬さんを見て一目惚れなさったそうで…」
「大紋先輩はかっこいいからなあ〜。…ま、俺と同じ位だけどね」
暁をリラックスさせようとした風間に暁はようやく少しだけ笑う。
「…でもその縁談の話を僕には一切仰らなかったんです」
「それはさ、多分縣に気を遣わせたくなかったからじゃないの?…聞けばきっと気にするでしょ?」
「…そうですね。…多分。春馬さんはとても優しい方だから…」
「惚気?」
わざとふて腐れたような貌をする風間に首を振る。
「…いいえ。…今日、春馬さんと絢子さんがご一緒にいるところを見た時、凄くお似合いだなと思ったんです。…貴族のお嬢様でお綺麗でお淑やかで…何より春馬さんをとても愛していらっしゃる…。春馬さんは爵位はありませんが、お家は名家で腕利きの弁護士です。…周りが是非に縁談を…と勧められるのも分かります」
「まあ、可愛らしいお嬢さんだったけれど、縣の方が美形だよ。…て、そういう話じゃなくてさ、似合う似合わないなんて、側から見た感想なんて関係ないでしょ?大事なのは本人の気持ちでしょ?…あんまり言いたくないけれど、大紋先輩は縣を誰よりも愛しているよ。あのお嬢さんには悪いけれど、彼女が入る余地はない位にね…。て、俺も随分人がいいなあ」
ぼやく風間からは温かい気持ちが伝わる。
高輪の小高い丘に建つこのホテルは、新興ホテルではあるが、モダンな洒落た造りと丁寧かつ欧米を模した接客も評判であった。
ホテル王と呼ばれる風間の父親が一代で築き上げた牙城でもある。
制服姿のウェイター達は風間が現れると、二人を緊張気味に個室に案内した。
だが社長の子息の連れということで、暁に対して丁重な接客はするが、露骨に興味津々な眼差しで見たりはしないのが助かった。
落ち着いた個人の居間のような部屋のソファに座り、風間のオーダーしたカクテルを飲むと、少しだけ気分が落ち着いた。
「…なにがあったの?話してごらん」
暁の貌を覗き込むようにして見つめる風間の表情からはいつもの人を喰ったようなふざけた色は一切なかった。
暁は重い口を開く。
「…今日いらした絢子さん…」
「うん」
「…絢子さんのお父様から是非にと春馬さんに縁談があったそうなんです。絢子さんがこの間の馬術大会に出場していた春馬さんを見て一目惚れなさったそうで…」
「大紋先輩はかっこいいからなあ〜。…ま、俺と同じ位だけどね」
暁をリラックスさせようとした風間に暁はようやく少しだけ笑う。
「…でもその縁談の話を僕には一切仰らなかったんです」
「それはさ、多分縣に気を遣わせたくなかったからじゃないの?…聞けばきっと気にするでしょ?」
「…そうですね。…多分。春馬さんはとても優しい方だから…」
「惚気?」
わざとふて腐れたような貌をする風間に首を振る。
「…いいえ。…今日、春馬さんと絢子さんがご一緒にいるところを見た時、凄くお似合いだなと思ったんです。…貴族のお嬢様でお綺麗でお淑やかで…何より春馬さんをとても愛していらっしゃる…。春馬さんは爵位はありませんが、お家は名家で腕利きの弁護士です。…周りが是非に縁談を…と勧められるのも分かります」
「まあ、可愛らしいお嬢さんだったけれど、縣の方が美形だよ。…て、そういう話じゃなくてさ、似合う似合わないなんて、側から見た感想なんて関係ないでしょ?大事なのは本人の気持ちでしょ?…あんまり言いたくないけれど、大紋先輩は縣を誰よりも愛しているよ。あのお嬢さんには悪いけれど、彼女が入る余地はない位にね…。て、俺も随分人がいいなあ」
ぼやく風間からは温かい気持ちが伝わる。