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暁の星と月
第4章 夜啼鳥の夢
「…大紋先輩が縣を好きになったのは本人の意思だよ。君が仕向けたとかそんなのは関係ないさ。
人間はどうしようもない情動に突き動かされて恋に堕ちるんだ。
周りがどうあろうと、どう言われようとね。
…縣にはファムファタール的な男を惑わす底知れぬ魅力がある。
一度口にしたら手放せないような淫靡で甘美な禁断の果実…。
自分では気づかないかも知れないけれどね…。
…多分大紋先輩は縣と一緒なら地獄に堕ちるのも厭わない覚悟があるんだよ。
先輩を信じてあげなよ」
きっぱりと言い放つ風間に、暁は涙で煌めく瞳を見開いた。
風間は優しい兄のような仕草で、暁の涙を拭ってやる。
そして、驚くほど真摯な口調と眼差しで諭した。
「…君は何も悪くない。もっと自分を大切にして幸せになろうとしなきゃ。…恋の神様は気まぐれだ。
愛する人の手を握りしめたら、決して離しちゃいけないよ」
「…先輩…」
「うん?」
「…先輩も苦しい恋をされているのですか?」
風間が虚を突かれたような表情を一瞬したが、すぐに破顔してにやけて見せた。
「まさか!…俺はご覧の通りのエキピュリアンさ。享楽的に生きて燃え尽きるように死ぬのが理想なんだ。
…苦しい恋なんて辛気臭いことをしている時間はないね」
「…先輩…」
風間は何か言いたげな暁を優しく抱きしめた。
「…辛くなったら、いつでも話においで。…俺はいつでも縣の味方だ」

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