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暁の星と月
第4章 夜啼鳥の夢
大紋はフォードを縣邸の車寄せに停めると、慌ただしく車外に出た。
そのまま、豪奢な煉瓦造りの屋敷を見上げる。
暁の部屋の灯りが灯っているのを見て、ほっと胸を撫で下ろす。

執事の生田が重厚なドアを開け、大紋に恭しくお辞儀をする。
約束なしの来訪でも表情一つ変えないのはさすがベテラン執事だ。
大紋は足早に玄関への階段を上りながら、端的に告げる。
「夜分に突然来てしまい、申し訳ない。…暁に…暁くんに急用があってね」
生田は丁寧にお辞儀をしながら、大紋を中へと招き入れる。
「…暁様は今、お部屋に入られたところでございます。ただいまお取り次ぎをいたします」
大紋は聞き咎め、眉を寄せる。
「…今?…随分帰りが遅かったようだね」
「はい。風間様にお送りいただき、先ほど…。てっきり大紋様とお出かけかと思いましたが…」
大紋は咳払いをする。
「拠のない事情で、別行動だったのだ。…取り次ぎはいい。僕が自分で行くよ」
生田の案内を断り、大階段を駆け上がる。
天鵞絨の絨毯を踏みしめ、二階の奥の暁の部屋に急ぐ。

ノックをするや否や、返答を待つ前にドアを開ける。
今まさに、タイを緩めようとしていた暁が驚きで目を見開く。
「春馬さん!」
大紋は後手に鍵をかけ、大股で暁に近づく。
思わず後退りする暁の肩を掴み、顎を捉える。
「…風間とどこに行っていた?」
「…何を仰っているんですか?」
「風間と2人でどこに行っていたと聞いているんだ」
そして暁のうなじの匂いを嗅ぎ、鋭い眼差しを投げる。
「…君の匂いじゃないな…。他の男の匂いがする…」
暁が綺麗な眉を顰め、渾身の力を振り絞り、男を押しのける。
「帰ってください。さもないと…人を呼びます」
「暁!」
大紋が次の間に逃げ込もうとする暁の腕を捉え、強い力で引き寄せる。
暁が抗う間を与えずに、その小さな顔を両手で覆うと強引に唇を奪った。
「…んっ…い…や…はなし…て…」
必死でくちづけから逃れようとする暁を閉じ込めるように抱き締める。
「…暁…!…すまなかった…」
振り絞るように詫びる大紋の声を聴き、暁の身体から力が抜ける。
男のくちづけは労わるような愛に満ちたものに変わる。
柔らかい花の蕾のような唇を大紋の熱い舌先が割り、暁の舌を求め、優しく絡める。
濃密に舌を絡められ口内をも優しく愛撫され、強張っていた暁の身体は柔らかく弛緩してゆく。



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