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暁の星と月
第4章 夜啼鳥の夢
「…嫌…い…あなたなんて…」
くちづけの合間に喘ぐように訴える。
「…あなたなんて…大嫌い…大嫌い…」
言葉とは裏腹に、暁から男の舌を求める。
吐息を奪い合うように濃密なくちづけを交わす。
暁の口内は男の猛々しい肉厚な舌に思う様に蹂躙される。
その甘美な快感に暁は眩暈を起こし、逞しい胸に身体を委ねる。
「…すまなかった…許してくれ…」
暁の髪を優しく撫で、強く抱き締める。
「君に嫌な思いをさせてしまった…。許してくれ…」
大紋の真摯な言葉は暁の胸に素直に響いた。
暁は男の胸に顔を埋めたまま、静かに首を振る。
「…いいえ、…春馬さんは悪くありません…貴方は何も悪くない…」

自分を一途に慕う絢子を無下にはできない。
紳士らしく優しく相手を尊重する。
そういう優しい大紋を暁は好きになったのだ。
…だが、自分以外の…しかも女性に笑いかけたり、話しかけたりするのには耐えられなかった。
大紋と絢子が似合いのカップルに見えたのにも胸が灼けつくような嫉妬を覚えた。
…でも…。
暁は大紋の腕の中からゆっくりと顔を上げ、寂しげな微笑みを浮かべる。
「…絢子さんは本当に春馬さんがお好きなんですね…」
…あの熱い眼差し…
淑やかな性質が透けて見える顔立ちや立ち居振る舞いなのに、大紋に対しては全身全霊で愛を訴えていた。
その一途さが羨ましかった。
「…そうかもしれない…。だが僕は…」
大紋の言葉を静かに遮る。
「考えたのです。…春馬さんは何れは名家のお嬢さんとご結婚なさるでしょう」
大紋の表情が険しくなる。
「暁!」
「…貴方は由緒正しくご立派なお家の跡取りです。結婚しないなど、周りが許さないでしょう。
…それならば…より良い方を早めにご結婚相手に選ぶべきです。…絢子さんは子爵令嬢で、ご両親は春馬さんを気に入っていらっしゃいます。絢子さんはお美しく淑やかで申し分のないお嬢さんです。
…何より貴方を一途に愛していらっしゃる…」
「…何を言っているんだ」
「…絢子さんとご結婚されるのが最良の選択です」
暁の腕が痛いほど捕まれる。
「自分が何を言っているのか解っているのか?」
射るような眼差しの大紋を暁はしっとりと潤んだ瞳で見つめ仄かに微笑った。
「…解っています。…春馬さん、絢子さんとご結婚されてください…」
「暁!」
大紋の男らしく理知的な瞳が信じられないように見開かれた。
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